こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
私は以前、ブログ内で【メディセオのリストラに関する記事】をアップした事があるのですが…
その後、本件に深く関わっているであろうGSK(グラクソ・スミスクライン社)による“卸切り”の影響について考えてみました。
ご存知の通り、GSKは大手外資系の製薬メーカーです。
過去には営業数字の撤廃するなど、何かにつけて医薬品業界にてパイオニア的な方針を掲げてきたGSK。
とにかく進取果敢な姿勢を崩さないことで有名なメーカーですが、これまた今回も凄いことに踏み切りましたね。
まさか、メディセオグループを含む医薬品卸各社との取引を打ち切るとは驚きました。
そう、平成の終盤頃から流行っている『製薬メーカーによる“卸切り”』です。
2020年10月26日にRISFAXが報じた内容によると、GSKが2021年4月から取引を中止するのは、以下の医薬品卸各社です。
・アトル
・中北薬品
・岡野薬品
・マルタケ
・新生堂
・宮崎温仙堂商店
うーん…
元MSの私も知らない卸がいくつかあります(汗)
…と言うより、知名度の高低を問わず、医薬品卸って全国各地に色々な会社があるんだなぁと改めて実感した次第です。
日本国内には医薬品卸が多過ぎる!!
…という意見も分からなくはないですね。
さて、こういった医薬品卸の共通点を考えてみたところ、正直言ってよく分かりません。(汗)
会社の規模、従業員数、売上高など、全てバラバラです。
しかし、GSKだって何の理由もなく上記の卸との取引を打ち切るわけではないでしょう。
つまり、取引中止を決断した理由が必ずあるはずです。
コスト削減が目的なのか?
プロモーション的な事情によるものか?
医薬品卸の対応が気に食わなかったのか?
元々会社のトップ同士の仲が悪かったのか?
外野である私が考えるだけでもいくつか思い浮かびます。
つまり、いくら考えても無駄っちゃ無駄です!!
…が、私は日頃から卸&メーカーの関係について、何が起こっているのかを勘ぐってしまいます。
今はMRで、なおかつ昔はMSとして働いていたことによる職業病ですかね。(汗)
そこで、GSKの思惑について私なりに考察してみようと思います。
GSKはコストカットを狙っている!
ご存知の通り、医薬品卸は製薬メーカーから医薬品を仕入れ、その医薬品を医療機関へと販売することで利益を得ている業種です。
では、医薬品卸における利益の源とは何か?
一般的に、医薬品卸の利益とは大まかに【売差】【リベート】【アローアンス】の3種類に分類されます。
(※ちなみに、売差は1次利益、リベートは2次利益、アローアンスは3次利益とも呼ばれています。)
このうち、リベートとアローアンスは製薬メーカーから医薬品卸へと支払われるマージンであり、製薬メーカーにとっては『なるべく支払いたくないカネ』でもあります。
製薬メーカーにとって、リベート&アローアンスとは、詰まるところコスト以外の何物でもありません。
以前、製薬メーカーの物流部門で働いたことがある人から聞いた話なので間違いありません。
不要なコストを削減したい。
会社の経営者としては誰もが考えることです。
コストとは決してゼロには出来ないけど、可能な限りゼロに近づけたい。
そうすることで会社としての収益が向上するからです。
当たり前と言えば、当たり前の話ですよね!
加えて、外資系メーカーの経営陣は日本の医薬品卸に対して懐疑的です。
今回のGSKによるメディセオを含む卸切りの根底には、こういった背景があるのではないでしょうか?
GSKの経営陣の考えとしては、大体こんなところでしょう。
ましてや、繰り返しになりますけど、日本国内には医薬品卸が数多く存在しています。
極端な話、金額の大小はともかくとして、GSKが10社の医薬品卸と取引しているのなら、10社に対してリベート&アローアンスを支払う必要があるのです。
仮にですが、A製品に対して1社あたり毎月100万円のリベートを払っているとします。
すると、A製品に関して10社と取引したら【10社】×【100万円】=【1,000万円】です。
1,000万円もあれば、MRを1人雇えますよね。
今のご時世、各製薬メーカーがMRをリストラしまくっています。
特に令和以降は、マジで笑えないレベルでリストラが多発している状況ですからね。
内資系であれば【アステラス製薬のリストラ】が、外資系であれば【ファイザーのリストラ】などが有名でしょうか。
そんなこんなで、業界内においてはMRのリストラそものが一種のトレンドである言えます。
MRのリストラ=人件費削減をしているのだから、並行して物流コストもカットされて然るべきです。
MRをリストラしている傍ら、取引している医薬品卸各社に対しては、今まで通りリベートやアローアンスが支払われている。
GSKとしては、この状況が面白くなかったのでしょう。
…かと言って、日本国内でGSKの薬剤を流通させるためには、何だかんだ言って医薬品卸の力が必要です。
じゃあ、取引する医薬品卸を見直して、リベート&アローアンスなどのコストを費やすのに相応しい卸とだけ取引すれば良い。
むしろ、この機会にGSKにとって不要な医薬品卸を見極め、リベート&アローアンスを出来る限りカットする契機にしたい。
その結果として、今回はメディセオと地方の地場卸数社が見限られた。
…といった流れではないでしょうか?
極端な話、GSKに限らず製薬メーカーにとっては、自社の医薬品をしっかりと流通させてくれるなら、どこの医薬品卸だって良いのです。
だったら、しっかりと流通なり販売促進なりしてくれる医薬品卸だけにリソースを割きたい。
営利企業として、そのように考えるのは当然のことです。
それにしても、この合理的な決断…
さすがGSKって感じがします!
この記事の冒頭でGSKはパイオニア的な方針を掲げていると書きましたが、個人的には『よくもまあ、ここまで思い切った決断したよな』って思っています。
私が就活生だった頃に受けた【GSKの選考】も、他社と較べると一風変わったものでしたが…
こういった他社が行わないような方針を掲げる辺り、ザ・外資系メーカーという感じがします。
取引卸が減っても医療機関&GSKは困らない
先ほどはコストカットの観点からGSKの考えを推測してみました。
私の推測が当たっているかどうかはともかく、取引卸を絞ることはGSKにとってはメリットだらけです。
繰り返しになりますが、今まで支払っていたリベート&アローアンスの分が浮くワケです。
それは即ち、その分だけGSKの収益が向上することを意味しています。
付け加えると、医薬品卸側とリベート&アローアンスを交渉する人間(特約店担当者など)の業務負担も減ります。
その上、GSKのMR目線で考えたら、仕事の中で付き合うMSも減ります。
この点についても、GSK社員の業務効率の向上に一役買うことに繋がるでしょう。
GSKのMRはメディセオ&地場卸との取引中止についてどう思っているのか?
GSKが医薬品卸との販促協業について『廃止』を決行!他の製薬メーカーも追随するか?
メディセオ&地場卸との取引中止となる2021年4月前後のタイミングでは、卸内での在庫調整などで一悶着あるかも知れません。
ですが、それ以降は先述したメリットが待っています。
つまり、GSKにとっては合理的かつ都合が良いシナリオというワケです。
(※そもそも、メリットが無ければ卸切りなどという決断は出来なかったでしょうけど。)
例えば、メディセオを含む4大卸が熾烈なシェア争いをしている東京の市場について考えてみましょう。
来春以降にメディセオと取引が無くなったとしても、他の4大卸たるアルフレッサ・スズケン・東邦がしっかりと薬の安定供給をしてくれる。
その保証があるならば、GSKも医療機関も全く困りません。
医療機関側からしたら卸同士の価格競争が弱まることで、GSK品目を安く買い叩けなくなる可能性はあります。
しかしながら、薬の安定供給という意味では特に心配はないはずです。
メディセオの高シェア先では多少の混乱が起こる可能性もありますが、それはあくまで一時的な問題でしょう。
卸Aがダメなら、卸Bや卸CからGSKの薬剤を買えばいい。
医療機関側にとっては、ただそれだけの話です。
メディセオ1社としか取引をしていない施設に関しては、もしかしたら一波乱あるかもですけど(汗)
では仮に、GSKの薬剤をメディセオから買っており、なおかつアルフレッサやスズケンとも取引している施設があるとします。
そういった施設の考え方について推測してみます。
このように、メディセオ以外の医薬品卸と取引していれば特に問題はありません。
医療機関にとって、GSKの薬剤について『必ずメディセオから買わなければいけない』などというルールはどこにもありません。
そして、GSKにとっても『自社の薬剤を必ずメディセオ経由で納入しなければならない』などというルールはありません。
いかにメディセオが大手医薬品卸の一角と言えど、ライバル卸であるアルフレッサ・スズケン・東邦・地場卸などがいれば、医薬品の安定供給には差し支えないでしょう。
むしろ、メディセオ&一部の地場卸の脱落により、卸同士の価格競争が緩和されるとの見方もできます。
4大卸による2019年の談合問題以降、全国各地で卸同士の価格競争が激化しているのは事実です。
医薬品卸4社のJCHO談合問題はいつ決着するのか?今後の展開について考えてみる!
卸同士の横の繋がりが消えたのだから、まあ当然の流れですよね。
このお陰で、市場実勢価格が凄まじいペースで下落しています。
GSKに限ったことではありませんが、弊社の薬剤も卸同士の価格競争により、納入価格がどんどん下がっています。(汗)
アンタたち、どこまで安売りすれば気が済むんだ!?
そんなに安い価格で利益あるの!?
…などとMRとして言いたくなるくらいの価格競争をしています。
このような卸同士の価格競争は、製薬メーカー側にとっても悩ましい問題です。
市場価格が下がった分だけ、次回の薬価改定で大幅な薬価ダウンに繋がるワケですからね。
まさに、百害あって一利なしです。
では、自社医薬品についての価格競争を緩和させるには、一体どうすれば良いのか?
その1つの答えが、メーカーとして取引する卸の”絞り込み”なのでしょう。
取引卸を減らすことで、卸同士の価格競争を多少なりとも抑制できるはず。
GSKとしては、これもまた狙いの1つなのかなと。
そう考えてみると、GSKとしては価格競争に伴う自社医薬品の薬価下落を抑えるために、今回の卸切りに踏み切ったのかも知れませんね。
地方の地場卸とは付き合う価値無しと判断した?
ところで、中北薬品やマルタケにおけるGSKの売上って年間どれくらいなんですかね?
メディセオは年間で約520億円の売上があるとRISFAXに記載されていましたが…
地場卸の規模を考えると、少なくともメディセオ以上にGSK品目を売っているということはないはずです。
むしろ、下手をしたら年間で数億円~数十億円というレベルかも知れません。
そんな細々とした売上しかないのに、GSKが地場卸各社と取引する意味ってあるんですかね?
ハッキリ言って、GSKの経営者からしたら付き合う価値のない会社と判断しても不思議じゃないです。
このドライな考え方こそが、外資系製薬メーカーの真骨頂という気がする…
売上が低い分、支払っているリベート&アローアンスも安いと思いますが、その安い金額ですら惜しいと思ったのでしょうか?
地方とはいえ、メディセオ以外の4大卸…
つまり、アルフレッサ・スズケン・東邦の3社がいれば薬の安定供給には問題ない気がします。
だったら、メディセオ共々、この機会に取引を打ち切ってしまえば良いということでしょうか?
あるいは、現場のMRや特約店担当者から、地場卸に対する不満の声でも挙がっていたのでしょうか?
それとも、さらに別の深い事情でもあるのか?
真実は分かりませんが、GSKが彼らのことを『不要な卸』と判断したのは事実です。
そして、不要と判断したのは相応の理由があるからであり、この決定は今後も覆ることはないでしょう。
“切られた側”である医薬品卸としては、ぶっちゃけ不満でしょうけどね…(汗)
2023年からスズケン&バイタルネットも“卸切り”の対象に…!!
2021年、メディセオを含む各社が“卸切り”に遭ったのは先ほどお伝えした通りです。
しかし、どうやらGSKはまだまだ卸に対する不満を抱えていたようです。
その証拠に、GSKは2023年の4月からスズケン&バイタルネットとの取引を停止することを表明しました。
さらなる“卸切り”の勃発により、医薬品業界は騒然としています。
スズケンは4大卸の一角を占める大手の医薬品卸。
バイタルネットは東北地方にて圧倒的シェアを誇る地場卸。
そのような卸会社を“切り捨てる”とは、GSKも思い切った舵取りをしたものです。
まさに風雲急を告げる展開であり、卸各社のみならず医療従事者の面々までもが困惑しています。
何と言っても、メディセオに続いてスズケンまでもがGSK製品を扱えなくなる影響はデカすぎます。
…と言うのも、例えばですが首都圏であれば、メディセオ・アルフレッサ・スズケン・東邦薬品の4社(つまり4大卸)とだけ取引している医療機関はゴロゴロあります
そんな施設において、メディセオだけでなくスズケンもダメとなったら、一体どうなるでしょうか?
そう、GSK製品は必然的にアルフレッサか東邦薬品から買うしかないワケです。
これって、薬を購入する側からしたら結構リスキーな状態なんですよね。
特に、欠品時のリスクは軽視できません。
極端な話、アルフレッサと東邦薬品がGSK製品について欠品を起したら、他に頼れる医薬品卸はいないワケですから。
まあ、アルフレッサと東邦薬品が同時にGSK製品の欠品を起こすという事態は、まず無いはずなのですが…
かつてMSとして働いていた身としては、特定の薬剤が一時的に品切れ状態となる可能性がある事もよ~く知っています。
例えば、ある病院が薬を買い占めた場合とか…
その他には、GSK製品の【急配】が発生した際も、かなり面倒なことになります。
仮にですが、GSK製品の帳合卸がアルフレッサだとしましょう。
もし何らかの事情により、アルフレッサが急配対応できない場合、一体どんなことが起こるでしょうか?
当然、医療機関としては東邦薬品に急配を頼むしかありません。
しかし、東邦薬品の多忙のため急配対応できないという場合は、いよいよGSK製品が納品されないという事態に陥ります。
ハッキリ言って、これは医療機関にとって憂慮すべきことです。
そんなこんなで、4大卸のうち2社までもがGSK製品を取り扱えないとなると、医療現場は少なからず混乱すること待ったなしです。
よって、医療従事者の中にはGSKの方針について批判的な人も散見されます。
まあ、GSKとしては批判を覚悟した上での決断なんでしょうけど…
今回の“卸切り”からは、薬剤の安定供給とか、医療従事者への配慮とか、そういった方面について慮っていない印象を受けてしまいます。
2023年4月以降、GSK製品を扱える卸は24社のみ
全国各地の医療機関に対して、決して小さくはない衝撃を与えたGSKの“卸切り”。
そんな経緯も相まって『2023年の4月以降は、どこの卸かGSK製品を買えば良いんだ?』と思っている医療従事者も多いことと思います。
そんな方々に向けて、GSKが取引を継続する卸についての文書を配っているとの情報をキャッチしました。
考えてみれば当然の話ですが、GSKだって医療機関向けに卸云々の案内をするに決まっていますよね。
かくいう私自身も、ある筋から『2023年4月以降もGSK製品を扱える医薬品卸は24社ある』と教えて頂きました。
その24社の内訳がこちらです。
・沖縄東邦薬品株式会社
・株式会社アステム
・株式会社エス・ディ・コラボ
・株式会社幸燿
・株式会社セイエル
・株式会社ダイコー沖縄
・株式会社ほくやく
・株式会社モロオ
・株式会社よんやく
・株式会社琉薬
・九州東邦株式会社
・酒井薬品株式会社
・四国アルフレッサ株式会社
・四国薬業株式会社
・ティーエスアルフレッサ株式会社
・東邦薬品株式会社
・東北アルフレッサ株式会社
・富田薬品株式会社
・中澤氏家薬業株式会社
・藤村薬品株式会社
・北陸東邦株式会社
・北海道厚生農業協同組合連合会
・明祥株式会社
ご覧の通り、見事なまでにアルフレッサ&東邦薬品の系列会社ばかりです。
(※ただし、アルフレッサや東邦薬品とは関係ない独立勢力的な地場卸も一部含まれていますが。)
ただ、個人的には『株式会社エス・ディ・コラボ』が含まれているのが少々解せません。
なぜかと言うと、このエス・ディ・コラボとはスズケンの系列会社だからです。
ちなみにですが、同社はスペシャリティ医薬品の流通に携わっている会社です。
そのため、スズケン本体とは別枠での扱いになっているのでしょうか?
何れにしても、この24社の中ではエス・ディ・コラボだけが異質な存在であるように見えます。
もしかしたら、何らかの裏事情が存在しているのかもしれませんね。
GSKのスペシャリティ医薬品だけは、特別にエス・ディ・コラボに任せる…という意味だろうか?
卸の絞り込みに困惑する医療従事者たち
製薬メーカーとして取引する卸を絞り込むのは、メーカー視点で見ればメリットが沢山あるからこその行為です。
その最たるメリットとはコスト削減であり、営利企業としては理に適っている判断だと言えます。
しかしながら、この一連の改革がGSKにとって一切デメリットが無いかと言うと、決してそうではありません。
GSKの都合による卸の絞り込みによって、マイナスの影響を受けるのは誰か?
それはずばり、医療従事者の人々です。
正味な話、GSKが取引する卸の絞り込んだ影響により、医療従事者たちは困惑する一方です。
2021年にGSKがメディセオとの取引を打ち切った時は、それほど大きな混乱は起きませんでした。
しかし、2023年のスズケン&バイタルネットとの取引停止は、医療従事者たちの間で大きな波紋を読んでいます。
それ程までに、2023年の“卸切り”による影響は甚大だというワケです。
何と言っても、GSK製品を扱えなく卸の数が多過ぎますからね。
それどころか、GSKが大幅な卸の絞り込みを決定した件について、未だに知らない医療機関すらあります。
地方にある小規模な調剤薬局などには、情報が十分に行き届いていないみたいです…
本件について、本来であればGSKのMRが率先して、卸の絞り込みに関する情報提供を行うべきです。
しかしながら、MRとて生身の人間です。
全国各地にある全ての医療機関(病院・開業医・調剤薬局)へと訪問し、会社として取引卸を絞り込む件について詳細に案内できるかと言うと、それは不可能だと言わざるを得ません。
どう考えても、マンパワーが足りないからです。
よって、MRの手が回らないような医療機関については、卸のMS経由で情報が伝えられることも多いようですが…
ハッキリ言って、そのような案内を受けた側である医療従事者からすれば、ただただ困惑するだけですよね。
一体なぜ、GSKは取引卸を絞り込むという決断を下したのか?
今後、スズケンやバイタルネットからGSK製品を再び買えるようになる可能性は無いのか?
こういった疑問が次から次へと湧いてきたとしても、無理はない話だと思います。
そもそも、特定の卸としか取引していない医療機関なんてのは、全国各地にゴロゴロあるワケですし。
スズケンの基盤が特に強いとされている名古屋あたりは、物議騒然といった状況になっていそうです(汗)
現在取引している卸から、GSK製品を買えなくなるという現実を突き付けられた医療機関。
そのような施設で働いている人々からすれば、GSKへの不満は絶えないことでしょう。
こんな具合に、GSKの方針に対して反発する医療従事者がいても、何ら不思議な話ではありません。
とりわけ、医療機関内での購入担当者にとっては【帳合】を変更するという手間も発生しますからね。
場合によっては、今のところ“卸切り”の対象となっていないアルフレッサや東邦薬品に対して、新規取引を強いられる施設も出てくるでしょう。
そういった意味では、GSKは顧客に対して負担を押し付けているという見方も出来ます。
GSKの経営陣は顧客からの反発を覚悟していた?
一見すると、GSKにとって都合の良いメリットばかりに思える“卸切り”。
その一方で、顧客である医療従事者の視点から見れば、必ずしも好ましい方策だとは言い難いのが実情です。
メーカーの都合により問答無用で取引卸の絞り込みを行えば、混乱は必至。
なればこそ、日本国内にて医療従事者から反感を買うことも十分あり得る。
下手をすれば、GSK製品の採用を取り止める医療機関だって出てくるかもしれない。
こういったリスクやデメリットについて、GSKの経営陣はどのくらい予期していたのでしょうか?
現在の展開は、全くの想定外だったのか。
それとも、多少の混乱は避けられないと想定していたのか。
私が思うにですが、おそらく後者ではないかと考えています。
有り体に言えば、医療従事者からの反発は織り込み済みのプランだったのかなと。
何と言っても、2021年にメディセオとの取引を停止したという“前例”があったワケですし。
多少の混乱を招きつつも“前例”は成功だったことから、今回はより大規模な“卸切り”を決意した…というのが真相ではないでしょうか?
どれだけ医療従事者から謗られても、経営陣にとってはコスト削減こそが最重要の命題。
そのように考えたからこそ、各方面からの反発を覚悟した上で、卸の絞り込みに踏み切ったのでしょう。
顧客云々はともかく、日本の医薬品卸に対してGSKが不信感を抱いているのは100%間違いありません。
…と言うのも、2023年にスズケン&バイタルネットとの取引を停止する以前から、GSKは卸との繋がりを解消するスタイルを貫いています。
まずは【医薬品卸との協業“一時停止”】に始まり、次いで【完全なる協業廃止】を断行していますからね。
徐々に、そして確実に、段階を踏みつつGSKは卸との関係性を断ってきたのです。
こうして卸と距離を置いてきた結果、1つの到達点として大幅な卸の絞り込みを実行に移したのかなと。
大体にして、リスクやデメリット云々を考えていたら、いつまで経っても大きな改革なんて出来ませんからね。
GSKの賞賛するワケではありませんが、GSKの経営判断には一理あるようにも思えます。
いつの時代も、改革期には多少なりとも混乱が生じるものです…(汗)
さらに深読みすれば、そもそもな話ですが、GSKにとって日本市場は大して魅力的ではないのかもしれません。
今さら言うまでもありませんが、GSKの本拠地はイギリスにあります。
つまり、イギリスにいるGSKの経営陣から見れば、日本法人自体が“支社”みたいなものなんですよね。
その“支社”で、医薬品卸なる業種に各種諸々のお金を要求されているとしたら、そりゃあイギリス本国に居る経営陣からしたら面白くないでしょう。
しかも、そんな状態が何十年にも渡って続いていたとなれば、改革大好きなGSKからすれば最優先でメスを入れるべき事案です。
よって、今回の“卸切り”とは、起こるべくして起こったとも言えます。
その結果として混乱が起きたとしても、GSKの日本法人が潰れるほどの致命的ダメージにはならない。
少なくとも、グローバル展開しているGSK全体の業績から見れば、それほど大きな影響は出ない。
おそらく、GSKの経営陣としては、そのような“読み”に基づいての決断だったのでしょう。
卸を絞り込んだことで医療従事者からの反発を招いたとしても、その事実に対して経営陣がどのくらい興味を示すのかは怪しいものです。
もしかしたら、遠い島国の些事くらいにしか思わないかもしれません。
実際のところ、GSKの経営陣が内心でどう思っているのかは不明ですけど…
ただ1つだけ言えるのは、彼らは怜悧冷徹な思考の持ち主であるということです。
そして今回に限っては、損得を天秤にかけた上で、自社にとっての利益を優先しただけなのかなと。
そうでなければ、卸の絞り込みなどという大胆なことは実行できなかったでしょうし。
良くも悪くも、GSKは営利企業としての姿勢を徹底している。
そんなことが窺い知れる一幕ですね。
最後に:今後も製薬メーカーによる“卸切り”は加速するだろう
医薬品業界を騒然とさせたGSKによる“卸切り”。
これら一連の出来事によって、医薬品卸と製薬メーカーとの力関係は大きく変動するでしょう。
2019年にノボノルディスクファーマがメディセオとの取引中止を発表したとき、私はいつか必ず『第二のノボノルディスクファーマ』が現れると思っていました。
ノボ 取引卸を削減へ 薬価制度改革など市場環境悪化で物流にメス 他の外資に波及の可能性も
ノボノルディスクの取引卸削減について「プラス影響」と評したベック社長の真意を考察する!
そんな状況の中、2番手で追随する製薬メーカーが、まさか外資系大手のGSKだったのは意外でした。
しかも、520億もの売上があるメディセオとの取引を打ち切るとは。
そしてさらに、スズケンとの取引まで切ってしまうとは。
あまりにも予想外な展開であり、まさに青天の霹靂って感じです。
ですが、むしろ今後は売上の大小とは関係なく、製薬メーカー側が卸切りを行っていく風潮が広まっていく気がします。
二度あることは三度ある…とも言いますからね!
何と言っても、製薬メーカーにとってはコスト削減のメリットが大きいのは明白です。
コスト削減の重要性が叫ばれている昨今の医薬品業界において、GSKが断行した一連の卸切り。
これは愚策なのか?
それとも妙策なのか?
それが証明されるには年単位の時間が掛かりそうですが、もし後者だったとしたら、業界の在り方が激変する可能性もあります。
当然、GSKのような方策を真似する製薬メーカーは、いずれ必ず現れるでしょうからね。
この状況では、メディセオ・スズケン・地場卸のみならず、他の医薬品卸にとっても戦々恐々といったところではないでしょうか?
結局のところ、医薬品卸は製薬メーカーと取引があってナンボです。
なおかつ、医薬品卸は製薬メーカーからの助けなしでは立ち行かない業種なのです。
私にも経験があるのですが、医薬品卸で働いていると自分たちの給料がどこから出ているのか忘れがちになります。
医薬品卸の社員が給料を貰い、メシを食べ、家族を養っていけるのは、製薬メーカー各社がリベート&アローアンスを支払ってくれているお陰です。
そして、リベート&アローアンスは善意で支払われるモノではなく、ビジネスの対価として支払われているカネです。
ついでに言うと、そういったカネを支払う・支払わないといった主導権は、医薬品卸ではなく製薬メーカー側にあります。
そう考えると、医薬品卸にとって製薬メーカーもまた顧客であるわけです。
よって、医薬品卸が今後生き残るためには『製薬メーカーから選ばれる卸』を目指していかないとダメなのでしょうね。
製薬メーカーから選ばれなかった医薬品卸は取り扱える薬剤が減っていく。
それは即ち、医薬品卸としての売上金額・利益金額が減ることを意味しています。
その状態が続けば、医薬品卸の経営は苦しくなり、リストラを行ってコスト削減を行わざるを得なくなると。
2021年に行われた【メディセオのリストラ】や【スズケンのリストラ】といった事例からも窺える通り、医薬品卸が財務状態が火の車なのは明らかです。
こういった状況では尚更、GSKのような“卸切り”を行う製薬メーカーは脅威以外の何者でもありません。
しかしながら、です。
“選ばれる卸”と“選ばれない卸”の明暗を分けるのは、結局のところ製薬メーカーの考え方次第なんですね。
いくら医薬品卸の社内では優秀な人材であっても、会社そのものが製薬メーカーから見放されてしまっては、活躍の場はどんどん減っていきます。
一介の社員…つまり、個人の力で組織を覆すことは出来ませんからね。
製薬メーカーによる取引卸の絞り込みが進むほど、医薬品卸に見切りをつけて転職していく人が増えるような気がします。
元MSの本音!医薬品卸のMSを辞めたいと思った理由について語る!
MS時代に活用していた転職サービス5選!各々のメリット・デメリットも一緒に解説します!
きっとこれが、医薬品業界における今後の流れなのでしょうね。
この流れに乗った卸が生き残り、流れに乗り遅れた卸は廃れていく。
そのことを改めて実感した一幕でした。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
コメント投稿はこちら
いや~GSKのこの英断!素晴らしいよ。これまでの卸、医療機関に対するぬるま湯体制(要求すればなんでも聞いてくれる)から脱却したことに大賛成。
変革する時は痛みは生じるもの。一部では売上が失くなることが予測されるがこれも一時的。真の取引先(卸2グルーブ、医療機関)とビジネス関係を構築することを望みます。
匿名さん
コメントありがとうございます!
GSKにとっては大きな決断だったと思いますが、今のところ大きな問題は起きていないようです。
これがコスト削減の成功事例として認められれば、他のメーカー(特に外資系)が追随するのは時間の問題かもしれません。
令和に入って以降、業界内での医薬品物流が大きな転換点を迎えているように思えます。