こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
MRやMSの方々は『リベート』という言葉を耳にしたことがあると思います。
業界内では『割戻し(わりもどし)』だとか『払い戻し』とも言われていますね。
さて、このリベートは医薬品卸にとって、アローアンスと並ぶ収入源の1つでもあります。
その一方で、リベートが減らされることで医薬品卸は苦しい状況に陥っています。
実はつい最近、製薬会社にて特約店担当をしていた人にリベートに関する話を聞く機会がありました。
その際、自分の無知さを痛感しまして、改めてリベートについて勉強してみました。
そこで本日は『医薬品業界でのリベート』というテーマついて書いてみようと思います。
リベートの意味とは?
リベートという言葉自体は会計用語だそうです。
ちなみに、リベートの語源は英語の『rebate』です。
この『rebate』を辞書で調べると色々な言葉が出てきます。
ご覧のように『賄賂』という意味もありますから、決して良いニュアンスだけの言葉ではないことが分かります。
ただし、誤解のないように言っておきますが、医薬品業界での『リベート』とは『割戻し』という意味で使われている言葉です。
ですから、業界的には決して疚しい言葉などではありません。
さて、そのリベートですが、医薬品業界だけに存在するものではありません。
メーカーと卸売業者との関係であれば、医薬品業界に限らずリベートは発生します。
これは日本独自の商習慣みたいですね。
私も今回改めて勉強するまでこの事実は知りませんでした。
リベートの仕組みとは?
医薬品業界におけるリベートはと、簡単に言うと『製薬会社が医薬品卸に支払うお金』です。
そういった意味では、アローアンスと近い性質を持っています。
製薬会社が医薬品卸に支払う『アローアンス』とは?医薬品業界の真実をお伝えします!
ただし、アローアンスとの明確な違いは、リベートの仕組みです。
一般的にリベート(割戻し)とは、以下のように定義されています。
…何だか小難しい定義ですね。
簡単にまとめるとキャッシュバックみたいなものです。
10,000円のモノを買ってくれたら1,000円をお返しします!
つまり、10,000円のモノを実質9,000円で買えますよ!
…という感じです。
では、医薬品業界での具体的な例について考えてみましょう。
例えば、製薬会社が1箱で10,000円する医薬品Aを医薬品卸に売る(出荷する)とします。
当然、医薬品卸としては医薬品Aを買う(仕入れる側)の立場です。
このとき製薬会社側が、
『1箱10,000円の医薬品Aを一度に100箱以上買ってくれたら、10%のリベートを提供します!』
…と提案したとします。
その提案通り、医薬品卸側が医薬品Aを一度に100箱買ったらどうなるでしょうか?
【10,000円 × 100箱 = 1,000,000円】です。
10%のリベートについて考えてみると、
【1,000,000 × 0.1(10%)= 100,000円】
…となります。
この場合『10%』が『リベート率』であり、『10万円』が『リベート金額』です。
つまり、医薬品卸側は医薬品Aを100箱以上まとめ買いすることで、
10万円の利益をゲットできるのです。
上記はあくまで1例ですが、製薬会社と医薬品卸との間ではこんなやり取りが起きています。
なお、リベート率・リベート金額は、製薬会社と医薬品卸の関係性によって異なります。
さらに言うと、同じ製薬会社の医薬品であっても、その種類によってリベート内容は異なります。
医薬品Aはリベート率が10%だけど、
医薬品Bはリベート率が5%だとか、
医薬品Cは1箱に対してリベート金額が10円だとか、
リベート内容が結構細かく決められていることもあるそうです。
こんな具合に、リベートとは医薬品卸側が薬をたくさん買えば買った分だけ利益が生まれる仕組みなのです。
アローアンスとは異なり、現場のMS(営業職)が何らかの販促活動をしなくても発生する利益です。
外勤職(営業)が生み出す利益がアローアンスなら、リベートとは内勤職(物流担当者)が生み出す利益だとも言えるでしょう。
なぜリベートが支払われる?
突然ですが、皆さんは医薬品卸の倉庫がどうなっているかご存じでしょうか?
医薬品卸の倉庫内では、いつでも薬を出荷できるように薬を管理しています。
当然、温度管理が必要な医薬品などは、その薬に適した温度環境で厳格に管理する必要があるのです。
例えば、2℃~8℃で保管しなければならない冷所薬があるとします。
こういった薬は24時間、2℃~8℃の環境で保管しないとダメなのです。
私がMS時代に勤めていた営業所では、冷所品は常に2℃前後に保たれている保冷庫で管理されていました。
当たり前の話ですが、この保冷庫の中は寒いです。
製薬会社から冷所品が入荷してくる度にこの保冷庫にて入庫作業を行い、医療機関から冷所品の発注が来る度に保冷庫から出庫する作業を行うのです。
作業そのものは単純なのですが、生身の人間が保冷庫内で長時間作業することは結構しんどいものです。
つまり、冷所品を適正な温度で管理するためには、倉庫の人間が過酷な作業を強いられるわけです。
さらに、保冷庫は常に低温状態であるからこそ意味があります。
低温状態を保つためには電力が要りますから、それに伴って電気代も必要になります。
そして、その電気代は決して安くありません。
その穴埋めのために支払われるのがリベートです。
製薬会社から医薬品卸へのリベートには、医薬品管理の際の人的作業に伴う人件費、低温状態維持に必要な電気代を賄うためにも支払われています。
これはある意味、製薬会社から医薬品卸への誠意の証でもあるのです。
こんな具合に、リベートには医薬品卸内での医薬品の管理費用のような意味合いもあるのです。
先ほど挙げた冷所品はあくまで一例であり、近年増えつつあるスペシャリティ医薬品などはさらに特殊な管理が必要だったりします。
代表的なものだと、2019年にスズケンが1社流通を発表したキムリアなどですね。
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ですから、多種多様な医薬品在庫を管理するために、医薬品卸はより多くのリベートを欲しがるのです。
リベートは減ってきている!
MRの皆さんならご存じの通り、業界内では早期退職(リストラ)が相次いでいます。
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製薬会社は将来を見越して人件費をカットしようと試みるだけでなく、同時進行で医薬品卸へのリベートやアローアンスも見直しています。
製薬会社だって資金繰りが苦しいこの状況では、医薬品卸にまでお金を回す余裕がないのです。
自社の社員をリストラする前に医薬品卸へのリベートやアローアンスを削ろうとするのは当たり前の話です。
つまり製薬会社目線で考えると、もはや医薬品卸の面倒を見ている場合ではないのです。
いかがでしょうか?
これが製薬会社側の本音です。
形はどうあれ、このようなやり取りが製薬会社と医薬品卸との間で行われています。
今の業界の流れが続けば、将来リベートやアローアンスはさらに減らされることでしょう。
つまり、医薬品卸としては貴重な収入源を失いつつあるわけです。
製薬会社は危ない!
MRは業界内で不要だ!
…などという話がここ数年で一気に増えましたが、製薬会社以上に危険な立ち位置にあるのは医薬品卸の方な気がします。
まとめ:リベートありきのビジネスは崩壊目前か?
後半は厳しい現実を含めて書かせてもらいましたが、これがリベートの実態です。
仕組み自体は理に適っていると思いますが、医薬品卸はその仕組み(リベート)に依存してきたのもまた事実です。
そのツケが、
昨今の医薬品卸は苦しい状況にある!!
…という評価に繋がっている気がしてなりません。
この記事を書くにあたって元特約店担当の方の意見を参考にさせてもらいましたが、製薬会社側もリベートを減らすのは心苦しいそうです。
だけど、減らすしかない。
製薬会社も自社が生き残るために、リベートを減らさないといけない。
そして、医薬品卸はその申し出を呑むしかない。
私はオーファンMRをしている人間なので、リベート云々という話を現場の医薬品卸側(MS)から聞くことはありません。
ですが、リベートのあり方を巡って今日もどこかで製薬会社と医薬品卸の交渉が行われているはずです。
アローアンスだけでなく、リベートについても今後の行方を見守っていこうと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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