ノバルティスの『キムリア』はスズケン1社流通!この戦略の意味とは?

MSの今後

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

 

5月17日のRISFAXや日刊薬業でノバルティスとスズケンの取り組みについて報じられましたね。

 

業界内でも注目されているノバルティスのキムリアですが、この薬剤はスズケンのみが扱えるみたいです。

 

先日の記事で書いた通り、キムリアは3,349万円の超高薬価品です。

 

ノバルティスの『キムリア』が薬価決定!まさかの3,349万とは!

 

この薬剤を1社流通に持ち込んだスズケンの狙いとは?

 

そして、なぜノバルティスは取引卸としてスズケンを選んだのか?

 

その辺りの事情について書いていこうと思います。

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ノバルティスとスズケンはどのような形で協力するのか?


今回報じられた内容を自分なりに整理してみました。

 

キムリアを製品化するには、まず患者自身のT細胞を採取するところからスタートします。

 

その後は、以下の流通体制で運用されます。


①採取した患者のT細胞をノバルティスの米国工場に空輸する。
②米国工場で細胞の加工・培養が行われる
③加工された細胞をノバルティスの篠山工場(兵庫県)に運ぶ
④篠山工場から医療機関へとキムリア(加工細胞)が届けられる

この①~④のうち、スズケンは④の輸送に関わるようです。

 

RISFAXの原文そのままですが、

 

『輸送時は液体窒素を充填した専用容器のドライシッパーを用い、マイナス120度以下で温度管理する。』

 

とのこと。

 

ドライシッパーって何?

 

…ということで調べてみたところ、液体窒素を用いて低温状態を保ったまま搬送する容器を指す言葉でした。

 

ただし、キムリア輸送時に使うドライシッパーはスズケンではなくノバルティス側が用意するみたいです。

 

しかも、そのドライシッパーはスズケンの拠点で管理するわけでもないし、キムリア流通について特殊な設備追加を行ったわけでもないらしい。

 

ここまでが5月17日に報じられた内容です。

 

この文面だけを見ると、篠山工場から医療機関へと運搬することだけがスズケンの業務ということになります。

 

つまり、スズケンの物流センターや営業所を介さずに、単純にただ運ぶだけです。

 

もちろん、そんな単純な物流体制ではないと思いますし、まだ開示されていない情報があるのかも知れません。

 

とはいえ、この報道内容を見て個人的には、

 

キムリアの流通にスズケン(卸)って必要ある?

 

…と思ってしまいました。

 

ノバルティスが自前で運送役を雇い、自前で医療機関に届ける方が効率的なのでは?

 

卸を介さずに直販した方がメリットが大きいのでは?

 

…というのが正直な感想です。

 

スズケンは以前からスペシャリティ医薬品の流通に力を入れていましたが、その辺りが影響したのかも知れません。

 

どうせモノ運びを頼むのなら、ノウハウを持っている国内業者に頼んだ方が良いとノバルティス側が判断したのでしょうか?

 

今後も続報が気になります。

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医薬品卸の1社流通はライバル卸への攻撃と防御を兼ねている


私も元MSなのでよく分かるのですが、この1社流通は卸にとってのメリットが大きいです。

 

例えば、今回のキムリアについて考えてみます。

 

スズケンの他に“卸A”“卸B”がいたとして、“Z病院”へのキムリア納入の話が持ち上がったとします。

 

これはスズケンがZ病院と取引が有るか無いかで話の流れが変わりますが、基本的にはスズケン有利です。

 

では、パターン別に見てみましょう。

①スズケンとZ病院とで取引が有るとき

Z病院『今度キムリアを使う予定があるからスズケンさん、宜しく頼むよ。』
スズケン『はい!任せてください!』
Z病院『卸Aや卸Bにもお世話になってるけど、キムリアを運ぶときに使うマイナス120度のドライシッパーはスズケンさんじゃないと扱えないからね。』
スズケン『はい!ノバルティスさんから、キムリアの運搬については一任されていますから!』
卸A&B『くそっ…。面白くない…。スズケンの野郎め…。』
Z病院『そうだよね。卸Aや卸Bにキムリアのことを頼んでも、彼らにはどうすることも出来ないしからね。』
卸A&B『ぐぬぬ…。悔しいけど言い返せない…。』
Z病院『やっぱりスペシャリティ医薬品の流通はスズケンさんに限るね。』
スズケン『ありがとうございます!』

こんな具合に、流通に関してはスズケンの一人勝ちで

 

卸Aや卸Bではどうすることもできないのです。

 

ノバルティスが専用のドライシッパーをスズケンにのみ使わせる時点で、卸Aや卸BがキムリアをZ病院に届ける術はないのです。

 

つまり、スズケンは3349万の超高薬価品をライバル卸に邪魔されることなく売ることが出来るわけです。

 

この一連の流れは、ライバル卸にキムリアに売上を譲らないための土俵でもあります。

 

つまり、医薬品卸としての商売をする上では防御としての意味合いが強いです。

②スズケンとZ病院とで取引が無いとき

Z病院『今までウチは卸Aと卸Bとだけ取引してきた。でも今度キムリアを使う予定があるから、この機会にスズケンと取引を始めないとなぁ…。』
スズケン『Z病院さん、ウチとの取引をご希望ですか?』
Z病院『おたくがスズケンさん?今度キムリアを使う予定があるんだけど、この薬はスズケンさんでないとウチに届けてもらないんでしょう?』
スズケン『はい、そうです!』
Z病院『ウチは今まで卸Aや卸Bにお世話になっていたけど、この機会にスズケンさんと取引を始めようと思うんだ。』
スズケン『はい!ぜひお願いします!』
卸A&B『ちっ。スズケンがZ病院と新規取引スタートか。面倒なことになりそうだ。』
スズケン『ところで、当社からキムリア以外の薬を買う予定はありますか?』
Z病院『いや、スズケンさんにはキムリアだけ頼もうと思うんだけど?』
スズケン『そうなんですか?卸Aさんや卸Bさんから買っている薬の価格にご不満はないのですか?』
Z病院『不満かぁ。確かに卸Aと卸Bの提示価格は高いと感じるときがあるけど…。』
スズケン『ウチだったら卸Aさんや卸Bさんよりも安い価格で薬を提供できますよ!』
Z病院『そうなの?じゃあ、取りあえず見積もりを頼めるかな?』
スズケン『はい!喜んでやらせて頂きます!』
卸A&B『これはヤバいぞ。ウチへの注文がスズケンに流れる可能性が出てきた。今後は売上が増えるよりも減る可能性の方が高い。困ったな…。』

~数日後~

Z病院『スズケンさんの見積もりを見たよ!いくつかの薬は卸Aや卸Bよりも安いみたいだね?』
スズケン『えっ?そうなんですか?』
Z病院『うん。だから、今後はキムリア以外にも、卸Aや卸Bよりも安い薬についてはスズケンさんに注文するよ!』
スズケン『ありがとうございます!』
Z病院『いやぁ~、もっと早くスズケンさんと取引を始めていれば良かったよ!』
卸A&B『ぐぬぬ…。一部の商品はスズケンに注文が流れてしまった。悔しい…。

いかがでしょうか?

 

こんな具合に、取引がない病院に対して1社流通であることは大きな武器です

 

スズケン、Z病院、共に取引開始の大義名分となるからです。

 

そして、多くの場合、新規参入した卸は注文奪取を狙います。

 

せっかくの新規取引なんだから、病院からライバル卸への注文をウチに回してもらおう!

 

…という魂胆ですね。

 

卸Aや卸Bにとっては、マイナスになることはあってもプラスにはならない話です。

 

つまり、卸Aや卸BにとってはスズケンがZ病院にて取引スタートとなること自体が脅威となるわけです。

 

まとめると、この場合はスズケンによる他卸への攻撃という意味合いが強いです。

 

私が書いた今回の会話例はあくまで一例ですが、こんな感じで医薬品卸は営業合戦をしています。

 

1社流通であることを上手く活かせば、状況次第で武器にも防具にもなるわけです。

まとめ:医薬品卸の1社流通は今後も増えていくだろう


キムリアに限った話ではありませんが、1社流通は医薬品卸の生き残り戦略なんだなぁと感じています。

 

医薬品卸は差別化が難しいビジネスです。

 

医薬品の納入価格はどの卸でも大差はない。

 

物流サービスも各卸で似たようなもの。

 

つまり、病院目線で考えたらどこの卸から何を買っても大きな違いは無いのです。

 

そんな差別化が難しいビジネスだからこそ、1社流通という付加価値によって少しでも業績向上を狙っているわけです。

 

そして、このような1社流通によって、

 

どの製薬メーカーが、どの医薬品卸を評価しているか?

 

…という事情が見えてきます。

 

ノバルティスがスズケンをどの程度評価しているかは不明ですが、少なくとも、

 

“他の卸よりはスズケンのことを評価している”

 

…ということは確実でしょう。

 

ここ数年くらいでスペシャリティ医薬品の1社流通が目立ってきましたが、今後もこの流れは加速していきそうですね。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!



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