東和薬品のような直販メーカーが増えると卸(MS)は不要になるかも?

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

皆さんは東和薬品という後発品メーカーをご存知でしょうか?

よくTVのCMで黒柳徹子さんが東和のジェネリックと言っている製薬会社です。

この東和薬品は業界内でも珍しい直販メーカーです。

直販とはその名の通り、自社で直接、医療機関への流通と販売を行うということです。

言い換えれば、医薬品卸を介さないビジネスモデルでもあります。

さて、私はMS時代に担当していた病院にて、この東和薬品に後発品の注文を根こそぎ持っていかれた経験があります。

それはヒサシがMSとして無能だったからじゃないの?

と、お思いの方!

それは誤解です。

私(自社)だけでなく、他卸の後発品注文も殆どが東和薬品に流れました。

よって、私が無能MSだったから東和薬品に注文が流れたわけではありません。

(と、思いたいです…。)

さて、今日はそんな直販メーカーである東和薬品と、医薬品卸の未来について記事にしてみました。




東和薬品に後発品の注文が流れたときの状況


これは私がMSとして5年目に入った頃の出来事でした。

この記事の冒頭で書いた通り、私が担当していた病院にて後発品の注文が東和薬品に流れてしまったのです。

なお、これ以降はその病院のことをI病院と書かせていただきます。

I病院の状況はこんな感じです。

・病床数:300床ほど

・院長から薬剤部に『1円でも安い会社から医薬品を購入するように!』と指示が出ていた

・薬剤部長が『安くしろ!安くしろ!』と、卸(MS)を焚き付けるタイプの人だった

状況だけを見れば珍しくとも何ともありません。

薬剤部からの値引き要求は毎度のことですから、MSとしてはイチイチ気にしてられません。

しかも、他卸はどうか知りませんが、自社としては既に利益が出るか出ないかのギリギリまで安くしていました。

よって、私はMSとして、

『もうこれ以上安く薬を販売することは不可能だ。』

と思っていました。

さて、そんなI病院はある日突然、東和薬品との取引を始めました。

その理由については当時の薬剤部長曰く、

『おたくら(各卸)の後発品よりも、東和薬品の後発品の方が安いからだよ。』

とのことでした。

不幸中の幸いか、I病院における当社の後発品シェアは低い方だったので、私としてはそれほど大きなダメージはありませんでした。

一方で、後発品シェアが高かった他卸にとっては痛手だったことでしょう。

そしてこのとき、私はこんなことを考えていました。

他の病院で東和薬品がこの作戦で攻めてきたら厄介だな。

東和薬品に価格面で勝つのは難しいだろうな。

こんな風に東和薬品に対して脅威を感じたのです。

なぜ東和薬品の後発品は安いのか?


東和薬品の賢いところは医薬品卸にマージンを払わずにビジネス展開しているところです。

他の製薬会社とは異なり、卸にマージンを払わなくて済む分、安売りすることが可能なのです。

簡単に言うと、会社として安売りするだけの体力があるということです。

直販メーカーならではのアドバンテージをフル活用しているわけですね。

そもそも、一般的な製薬会社の場合、医薬品の流通に関しては卸に任せています。

例えば、包装薬価が1,000円の薬X(エックス)があるとします。

医薬品卸は製薬会社から薬Xを700円で仕入れ、800円で医療機関に薬Xを販売する。

そうすることで、医薬品卸側に差額分の100円が儲け(利益)として生まれます。

これが医薬品卸の基本的なビジネス形態です。

この場合、物理的な医薬品の流れは大体こんな感じです。

製薬会社の工場→医薬品卸の倉庫→医療機関(病院や薬局など)

つまり、医薬品卸を介して医薬品を流通させているのです。

一方、東和薬品の医薬品の流れはこんな感じです。

東和薬品の工場→東和薬品の倉庫(または営業所)→医療機関(病院や薬局など)

ご覧のように、東和薬品は流通も自社で行っているため、卸(流通会社)にマージンを支払う必要がないのです。

このことを踏まえて、I病院での出来事について解説します。

A卸は包装薬価1,000円の薬Xを薬価差率で20%引き、つまり800円で販売しています。

卸値を800円から下げることも可能ですが、それには限度があります。

A卸は医薬品Xを700円で仕入れていますから、販売金額を700円より下げることは出来ないのです。

場合にもよりますが、基本的に薬を利益ゼロで販売するメリットはありません。

よって、どんなに安売りするとしても710円か720円くらいが関の山です。

そんなA卸の後発品を自社のモノに切り替えようと、東和薬品はこのような価格交渉をします。

A卸が納めている医薬品Xの価格に不満はありませんか?

弊社には医薬品Xの類似品である『医薬品Z』があります!

医薬品Zも包装薬価が1,000円の薬です!

この医薬品Zを薬価差率で40%引き、つまり600円で販売させてください!

弊社は直販メーカーだからこそ原価が安く、このような低価格販売が出来るのです!

I病院さんにとっても良い話だと思うのですが、いかがですか?

こんな風に営業されたら、I病院のような安さ重視先は当然東和薬品の薬を買います。

そもそも、後発品というのは薬Xだろうと薬Zだろうと大差はありません。

(※剤型や包装など、多少の違いはありますが…。)

ましてや薬価が同じならば、あとは実際の卸値が明暗を分けます。

こんな具合に東和薬品に価格攻勢をかけられたら、普通の医薬品卸には勝ち目はありません。

I病院において、東和薬品は勝つべくして勝ったのです。

東和薬品のような直販メーカーが増えたらどうなるか?


繰り返しになりますが、東和薬品のような直販メーカーとまともに価格勝負した場合、医薬品卸の勝ち目は薄いです。

だからこそ、医薬品卸は価格以外の要素に力を入れています。

例えば、薬の定時配送、小分け販売、休日対応、返品要望への柔軟な対応、MSに接待させて気分良くなってもらう等々、やり方は様々です。

しかし、どれもこれも限界があります。

結局のところ、ユーザーが求めている、

『薬を安く買いたい!』

というニーズについて根本的な解決を目指しているわけではない。

むしろ、

『安売りできない代わりに他のサービスを充実させます!』

という意思表示なんです。

これは医薬品卸が悪いということではなく、卸が卸として生き残るための戦略です。

薬を安く買うことではなく、安定供給を第一に望む医療機関だってあるのです。

そういう意味では、一部の顧客のニーズを満たしているかも知れない。

とはいえ、薬の安売りを望む医療機関が多数派であることは間違いありません。

こんな状況で、東和薬品のような直販メーカーが増えたらどうなるでしょうか?

医薬品卸への注文が直販メーカーに流れるだけです。

私がMSだった頃に何度も思ったことですが、東和薬品のビジネスは賢いです。

それと同時に、彼らはI病院において、少なくとも後発品に関しては医薬品卸(MS)は必要ないということを証明しました。

実際、I病院における東和薬品の攻め方は大成功でした。

薬の安売りによってI病院は喜び、東和薬品も喜び、悔しい思いをしたのは医薬品卸(MS)だけ。

医薬品卸(MS)の存在意義って何だろう?

と、そのときは心底考えさせられました。

何より、東和薬品1社だけでこれだけの影響があったのです。

第2、第3の東和薬品みたいな直販メーカーが現れたら、いよいよ医薬品卸(MS)の立場も危うくなる気がします。

このI病院での一件で、私はより一層、医薬品卸(MS)の将来について不安を募らせました。

この出来事が、私がMSを辞めるきっかけの1つにもなったほどです。

業界内ではMR不要論が叫ばれていますが、それ以上にMS不要論の方が深刻なように思えます。

なお、東和薬品は2017年からスズケンと、2018年からは東邦薬品を介して医薬品流通を行っています。

表向きは東和薬品が売上アップを狙うための提携みたいですが、果たして本当にそれだけなのか?

市場を荒らす東和薬品を、スズケン&東邦が懐柔した結果なのでは?

そんなことを考えてしまいます。

まとめ


医薬品卸が薬を安売りするのには限界がある。

よって、医薬品卸にとって直販メーカーの価格攻勢は脅威である。

いかがでしたでしょうか?

今の私はMSではありませんが、こういった薬の流通事情に関しては一応チェックしています。

同時に、国内の王手製薬会社が直販を開始したらどうなるか?なんてことも考えたりします。

例えば、もし武田薬品や第一三共が直販を開始したらどうなるでしょうか?

当然、医薬品卸はとんでもないことになりそうです。

もちろん、そんなことが起こる可能性は殆どゼロでしょう。

しかしながら、メーカーから卸へのアローワンスが削減されていることを考えると、可能性はゼロとは言い切れないのでは?という気もします。

今後もMRだけでなく、医薬品卸(MS)のことも含めて、業界の動向を探っていこうと思います。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!





シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする