こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
本日は、医薬品の出荷調整または出荷停止の際、医薬品卸のMSがどういった仕事をしているのか?
…ということについて記事化してみました。
さて、この記事を書いているのは2020年の12月下旬ですが、業界内ではイトラコナゾール錠の自主回収問題が炎上する一方です。
健康被害が続出!小林化工によるイトラコナゾール錠の自主回収について思うこと
健康被害の元凶となったイトラコナゾール錠そのものだけでなく、製造メーカーである小林化工の他品目、さらには小林化工と関係のあるメーカーの医薬品までも出荷調整、あるいは出荷停止となりつつあります。
こういった場合、医薬品卸のMSにとっては多忙を極める展開となります。
MSの名誉のために書かせていただきますが、自主回収の仕事は楽なものではありません。
…というか、ぶっちゃけ辛いです。
それはなぜか?
MSにとっては1円の実績にもならない業務だからです。
そのくせ、自主回収の仕事をいくらこなしたからといって、上司(会社)から褒められることなどありません。
加えて、医療機関からは自主回収となったことについて理不尽なクレームを叩き付けられたり、代替品の状況についてせっつかれたり、とにかくストレスが半端じゃないです。
そういったクレーム対応を含めて、MSならばやって当たり前。
どんなに嫌でも、どんなに憂鬱でも、MSとしてやり遂げないといけない。
それがMSにとっても自主回収です。
製薬会社の都合による自主回収によって医薬品卸のMSは苦しんでいる!
しかしながら、こういった自主回収時にセットで発生する現象が出荷調整&出荷停止です。
これもまた、MSを苦しめる要素の1つです。
その辺りの事情について、私自身の体験談を交えて語っていきます!
売れっ子MSほど苦しむ自主回収
MSとして売れている人ほど、多くの施設で、多くの薬剤を納めています。
MRが頑張ってプロモーションしている新薬から、MRですら見向きもしないような長期収載品や後発品まで、本当に様々です。
そんな売れっ子のMSほど苦しむのが自主回収というイベントです。
これは単純な話でして、売れていないMSより、売れているMSの方が自主回収の対象薬を納めている可能性が高いからです。
高シェア先を5軒担当しているMSより、10軒担当しているMSの方が自主回収のために割く時間と労力が必要になるのです。
私がMSだった頃、営業所のエースMSが自主回収関連の業務で廃人になっている場面を何度か見かけたことがあります。
製薬会社の都合によって、売れているMSほど苦しむ…これがMSという職業の理不尽なところです。
製薬会社の都合による自主回収によって医薬品卸のMSは苦しんでいる!
ですが、MSにとって本当の地獄はここからです。
自主回収に伴って、高確率で出荷調整・出荷停止が発生します。
この『自主回収』⇒『出荷調整&出荷停止』のスーパーコンボによって、多くのMSが苦しんでいます。
MSにとって煩わしい代替品の手配業務
そもそも、出荷調整と出荷停止とは何なのか?
例えばですが、A社が販売しているA薬、B社が販売しているB薬、2種類の薬剤が市場にあるとします。
さらに、これら2種類の薬剤は同種同効品であり、市場におけるシェアは同じくらいだとします。
さて、そんな状況でA薬について問題が指摘され、一部のロットのものが自主回収になったと仮定します。
その後、A薬の他のロットにも欠陥が見付かり、ついにはA薬そのものの出荷(供給)がストップします。
これが『出荷停止』と呼ばれる現象です。
(※出荷停止については、ここ最近だと小林化工のイトラコナゾール錠が該当します。)
この場合、MSは代替品としてB社が販売しているB薬を納品する必要が出てきます。
しかし、市場にB薬を安定供給するに当たって、B社の製造能力にも限界があります。
つまり、元々B薬を使用している施設に加えて、少し前までA薬を使用していた施設にまでB薬を供給するだけの余裕が無いのです。
つまり、B社目線だと需要が大きすぎて供給が追い付かない状況というワケです。
そこで発生する現象が『出荷調整』です。
こういった状況では、B社は元からB薬を使っている施設への供給を優先します。
自社医薬品のユーザーを優先するのはB社として当然のことです。
仮にですが、B社におけるB剤の市場への供給量を100とした場合、B社と医薬品卸との間ではこんな話が展開されています。
いかがでしょうか?
あくまで一例ですが、製薬会社と医薬品卸の間にて起こる出荷調整とは大体こんなイメージです。
…で、結局のところA薬の使用施設に頭を下げるのはMSという流れになります。
当然、A社のMRもA薬が自主回収になった時点で各施設に謝罪行脚はしています。
ですが、代替品を用意できないという意味で、MSはメーカーとは別のベクトルで取引先から怒られます。
あるいは、代替品を何としてでも用意しろとせっつかれます。
どちらにせよ、MSにとっては凄まじいストレスです。
例えばですが、こんな感じです。
いかがでしょうか?
実はこれ、私がMSだった頃の実体験です。
一字一句その通りではありませんが、大体こんな感じのことを言われました。
出荷停止・出荷調整に限ったことではありませんが、注文を減らす、あるいは取引自体をストップすることをチラつかせる厄介な取引先でした。(汗)
(※理不尽すぎる反面、自社のシェアが結構高かったことから、結局のところMSとしては彼らの要求を吞むことが多かったです。)
ここで紹介した会話はあくまで一例ですが、タチの悪い取引先はMSに容赦なく無理難題を押し付けてきます。
または、代替品のことだけでなく、ここでいうA薬が自主回収(出荷停止)になったことについての不満をなぜかMSにぶつけてきたりもします。
例えば『A薬が出荷停止!?ふざけるなよ!どうしてくれるんだ!?』とかね。
そんなことはMSではなく、A社のMRに言えって感じですよね。
ハッキリ言ってクソです。
しかし、いくらクソな取引先であっても、MSにとってはお客様です。
いくら不満のはけ口にされようとも、取引先からの要求に応え、彼らのために尽力する義務があります。
だから辛いのです。
まとめ:自主回収の後、MSは目立たないところで凄まじい業務量をこなしている!
MR目線だと中々分かりにくいところですが、出荷停止・出荷調整のときのMSの業務量は凄まじいものがあります。
在庫状況を勘案して、各取引先に代替品を上手く割り振るなど、色々な意味でバランス感覚が求められます。
その結果、MS同士で代替品の割り振り方を巡ってバトルになることも少なくないです。
その中でも、特に皺寄せを受けるのが売れっ子のMSです。
繰り返しになりますが、自主回収の対象薬を納めていた担当施設が多いMSほど地獄を味わいます。
その上、代替品の手配についても時間と労力を割く羽目になります。
これは誇張でも何でもなく、純然たる事実です。
製薬会社から自主回収の告知が出たとき、MSは自社から納めた自主回収対象のロット品を回収すれば良いという話ではないのです。
代替品の手配・納品なども行うこともまた、MSにとっては大切な業務なのです。
これら一連の仕事はMSにとってストレスであり、心身共に疲弊する要因でもあります。
この辺りが、MSが激務である理由の1つでもあります。
とにかく、最後に言いたいことは…
全国のMSよ、頑張れ!!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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