こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
2020年以降、医薬品の出荷調整が止まりませんね。
まさに業界内では空前絶後の出来事と言うか、今までに類を見ない状態が続いています。
それこそ、日刊薬業やRISFAXなどの業界誌でも、定期的に問題提起されるレベルの異常事態です。
MSの8割超、最大業務は「出荷調整」 労組調査、「得意先圧力で疲弊」「若手が次々辞職」の声
出荷調整「7000品目」、短期間で一気に倍増も MSの負担増大、価格交渉への影響を不安視
今この文章を読んでいる現役のMR&MSの中でも、出荷調整に関してウンザリしている人も多いのではないでしょうか?
かくいう私自身のその1人です。
たとえ自社品には問題が無くても、競合品・併用薬の出荷調整によって、とばっちりを食らうことも珍しくありません。
そして今度は、なぜか自社品も出荷調整されることになり、顧客への謝罪行脚を余儀なくされたりとか。
MRとして“1円の利益も生まない仕事”に時間&労力を割くのは、肉体的にも精神的にもキツいものがあります。(汗)
まず単純に仕事量が増えますし、そもそも謝罪を行うという時点で鬱屈とした気分になりますからね。
もし一度も出荷調整を経験していないMRがいたら、ある意味では幸せ者だと思う…
その一方で、医薬品卸で働くMSたちの苦労もまた半端ではありません。
…と言うより、出荷調整に伴う業務的な負荷という意味では、MRよりもMSの方が数段上ですからね。
何と言っても、MSは出荷調整に関する“全品目”について、いちいち面倒な業務をこなす必要がありますからね。
顧客への連絡然り、代替品の手配然り。
自社の出荷調整品だけに集中して仕事をしていれば良いMRとはワケが違います。
こういった事情も相まって、MSも、MRも、やり場のない怒りを漲らせながら仕事をしている人も多いのではないでしょうか?
時にはそんなマイナスの感情が暴走してしまい、結果的に『相手と不仲になってしまった…』というMR&MSも多いことと思います。
2020年以降、出荷調整が切欠で不仲になったR&MSは数知れず。
読者の皆さんにとっても、もしかしたら心当たりがあるかもしれません。
今この瞬間も、現在進行形でMR&MSを心身ともに苦しめている出荷調整。
そんな出荷調整がもたらす『MRとMSの仲違い』というテーマで、この記事では色々と語っていこうと思います。
MS(医薬品卸)は出荷調整の完全なる被害者
医薬品の出荷調整とは、言ってしまえば製薬会社側の都合によるものです。
自社の生産ラインに不備があったため、医薬品を製造&出荷できなくなった。
他メーカーの競合品が出荷停止になったため、自社の既存顧客だけに薬を供給するだけで精一杯の状態になった。
出荷調整へと至る事情は様々ですが、どれもこれも製薬会社側の判断により行われている事なんですよね。
そういった関係上、薬を仕入れる医薬品卸側としてはメチャクチャ困ります。
仕入れ元(製薬会社)がイカれている以上、医薬品卸側は打つ手がないワケですから。
一言でまとめると、製薬会社の都合に翻弄される『被害者』といった立ち位置ですね。
もし仮に、製薬会社に対して『もっと薬を出荷してくれ!』と言ったところで、そんな要求が通るはずもない。
もしそんな要求がポンポン通るくらいなら、製薬会社だって最初から出荷調整なんてしていませんからね。
早い話、医薬品卸の側からすれば、出荷調整となった時点で途方に暮れるしかないのです。
卸内で出来ることと言えば、今ある在庫をどのようにして振り分けるか。
出荷調整品を既存顧客へと届けるために、どの品目をどのように按分するか。
これらについて腐心するのが定番のパターンです。
言葉で表現すると簡単そうに見えるかもしれませんが、この一連の業務には膨大な時間&労力が費やされています。
医薬品の出荷調整・出荷停止の度にMSは苦しんでいる!自主回収後の地獄を語る!
元MSとして断言しますが、この辺りの調整業務はマジで大変なんですよ。(汗)
営業・事務・倉庫係など、ありとあらゆる職掌の人間を巻き込み、あーでもない、こーでもないと社内で討議を重ねる。
そんなこんなで会社としての供給できる薬剤量を計算し、その内容を最終的に顧客に伝えるのがMS(営業)の役目なのです。
当然ながら、当事者であるMSとしては堪ったもんじゃありません。
業務量が爆発的に増えるのは勿論のこと、さらに厄介なのは『出荷調整に関して過度なクレームを叩き付けてくる顧客がいる』という点です。
私も元MSだからこそ分かるのですが、MSに対して辛く当たる医療従事者って本当に多いんですよ。
MS時代に体感した“厄介な取引先”の特徴5選!彼らの悪意に振り回されてはダメだ!
出荷調整に関して言えば、大元の原因は製薬会社にあるというのに、なぜかMS(卸)が悪者扱いされますからね。
ここ最近は『カスハラ』という言葉が流行っていますが、まさにそんなカスハラの最前線で戦っているのがMSなのです。
要するに『出荷調整』という4文字の裏側には、MSを含む卸社員たちの鬱憤が隠れているワケです。
とりわけ、営業現場で辛酸を舐めさせられているMSたちの不満や怨嗟は並大抵ではないでしょう。
そんなやり場のないマイナスの感情が蓄積し、いつしか怒りの矛先がMRへと向いてしまうだと思います。
MSからすれば出荷調整について直接文句を言える製薬会社の人間はMRしかいないので、気持ちは分からなくもない…
ある意味ではMRも出荷調整の被害者である
今さら言うまでもないことですが、MRとは営業職です。
そう、薬屋の“営業”なんです。
よって、何らかの事情により顧客に対して謝罪するのはMRの義務であり、決して逃れられない宿命でもあります。
…なんてことは現役MRであれば百も承知の事実ですが、だからこそMRにとって、出荷調整時の顧客対応には承服できかねるモノがあります。
例えばですが、製薬会社内において、医薬品の生産部門(工場など)の不備によって出荷調整が行われたとしましょう。
その件について、顧客のもとに出向いて謝罪するのは誰か?
顧客からの容赦ないクレームに対して、逐一対応するのは誰か?
これらは全てMRが矢面に立ち、行っている事です。
つまり、社内的には“損な役回り”だと言えます。
だってMR(営業部門)のせいで出荷調整をしているワケではないのですから。
…にも関わらず、自分自身は悪くないのに謝罪行脚をさせられるときた。
こんな状況で不満を抱かないMRなんていないでしょう。
会社を代表して、頭を下げ、事情を説明し、なおかつ顧客から見放されないように最善を尽くす。
ハッキリ言って、こんなことをしている最中はお世辞にも良い気分とは言えません。
いくら仕事とはいえ、怒りと虚しさが半端ではないワケです。
でも、顧客への対応がMRの義務である以上、この役目を避けて通ることは出来ない。
結論、こういった業務を強いられる時点で、社内的にはMRも“被害者”だと言えるでしょう。
私もMRとして何度か出荷調整を経験していますが、あの時の顧客対応は精神的にキツかったです…
もちろん、顧客対応と並行して、MS(卸)への業務連絡も行っていく必要があります。
A病院では、今こんな状況です。
Bクリニックでは、院長先生がご立腹です。
C薬局では、今すぐに在庫をあるだけ持ってこいと要求されました。
こういった連絡を密にしておかないと、後々MRとMSとの間で認識のズレが現れ始めますからね。
私が元MSだから余計にそう思うだけかもですが、薬の現物を運んでいるのはMS(卸)ですから、やはり彼らとの連携や情報共有は大切にするべきなのかなと。
…と言っても、担当エリア内の各MSに連絡を取るのも、それはそれで骨が折れます。
総じて、出荷調整時はMRにとっても無視できないレベルの負担が発生するワケです。
こういった背景があることから、出荷調整に伴う不満の感情は、MRの中にも確実に生まれています。
その不満を自分の中で消化しきれなくなった時、つい苛々したり、他人に対して攻撃的になったりもします。
そんなタイミングで、自分と同じように苛々がMAXなMSから電話が来ようものなら、やはり内心では穏やかじゃないワケで。
初っ端から、お互いにキツい口調で会話するハメになったり。
単なる業務連絡が口論へと発展し、最終的には不仲になってしまったり。
そんなことが往々にして起こり得るのが出荷調整というイベントなので、やはりMRにとっては苦難でしかないと思っています。
要するに、誰も喜ばない展開にしかならないって事です…(汗)
出荷調整に関してMSに“謝罪”や“説明”をしないMRについて
出荷調整というイベントに関して“会社 対 会社”で考えてみた場合、どちらが加害者で、どちらが被害者でしょうか?
まずは、少なくとも医薬品卸が被害者サイドであることは100%間違いありません。
そして製薬会社に関しては、出荷調整の経緯にもよりますが、加害者サイドであることが多いです。
例えばですが、自社工場の生産ラインに問題があって出荷調整となった場合は、その製薬会社が“悪者”ですからね。
(※そうは言っても、競合他社の巻き込まれる形で仕方なく出荷調整している場合もありますが。)
もしその自社の不手際で出荷調整をせざるを得なくなったとしたら、その製薬会社のMRはMSに詫びるのが筋だと私は思っています。
製薬会社の都合で医薬品卸を振り回し、迷惑を掛けているワケですからね。
繰り返しになりますが、MRは営業職です。
つまり“会社を代表する立場”なんですよね。
頭を下げて謝罪するには及ばずとも、せめて出荷調整に至った経緯や、今後の対応くらいはMSに伝えてあげる必要がある。
…なんてことを私は思っているのですが、やはりMRにも色々な人がいるものです。
プライドが高いMRは、出荷調整に関して顧客には詫びても、MSには絶対に詫びない…なんてことも結構あります。
私もMRに転職して初めて実感したのですが、MSを見下している節があるMRって割といるんですよね。
待遇や学歴などを理由に、MSのことを蔑むようなMRが存在しているワケです。
彼らは出荷調整という場面であっても、直接【デポ】に出向いてMSに事情を説明するなんてことはしません。
それどころか、電話やメールでの連絡すらしないMRもいます。
それはそのMRなりの考えがあっての行動なのでしょうが、やはりMSの視点から見れば好ましい対応とは言えないですよね。
ただでさえ出荷調整が始まった時点で、MRとMSが不仲になる土台が出来上がってしまっているのです。
そのような場面でMRからの連絡が一切なければ、MSは余計に不満を募らせることでしょう。
これはある意味、火に油を注ぐような行為なんですよね。
実際、MR側の“我関せず”な態度が発端となって、MS側がブチ切れている場面に遭遇したこともありますし。(汗)
それまで表面上は上手く付き合ってきたMR&MSが、出荷調整という場面を通じて一気に不仲になる。
その背景には、MR側の鼻持ちならない態度が関係しているのかもしれませんね。
まあ、MS側の過度な文句が切欠で“売り言葉に買い言葉”みたいな展開になることもありますけど…(汗)
最後に:不遇な時こそ、MRもMSも人間性が問われる
MRやMSに限った話ではありませんが、人間の本性とは苦しい場面でこそ浮き彫りになるものです。
そして、MRにとっても、MSにとっても、出荷調整とは苦しいイベントであるのは周知の通りです。
つまり、出荷調整時の対応こそが、そのMRやMSの本質を表しているのかもしれない…なんて風に最近は思うようになってきました。
個人の力では如何ともしがたい出荷調整ですが、だからこそ本来の人間性が問われる場面なのかと。
相手の都合を汲み取ることなく、感情に任せて文句を言うのか?
相手の都合を慮って、出来るだけ最善を尽くすようにするのか?
前者よりも後者の方が良いのは言うまでもありませんが、それを実践するのは中々難しいですよね。
理屈はともかくとして、感情が付いてこないと言うか。
かくいう私自身も、出荷調整の時は何かにつけて苛々してしまって、普段付き合いのあるMSと不仲になりかけた経験がありますので。
出荷調整を通じて、感情のコントロールについて内省する場面が増えました…(汗)
出荷調整によってMRとMSの仲が分断されてしまった事例は、多分ですけど全国各地に溢れていると思います。
あの人が、ここまで無責任な人だとは思わなかった。
この人が、こんなに酷い人だとは知らなかった。
そんな風に相手のことを見損ない、距離を置くようになったMR&MSは多いのではないでしょうか?
私個人としては、それもまた仕方ないことだと感じています。
それ程までに、出荷調整とはMR&MSにとっての負荷が大きいイベントであり、なおかつ不遇を強いられる場面でもあります。
ハッキリ言って、MR&MSの心が荒むには十分なだけの威力がありますからね。
ただ、そんな辛いイベントたる出荷調整だからこそ“社会人としての礼儀”というものを心掛けたいものです。
出荷調整の際、MRも大変だけど、MSも大変である。
両者とも立場は違えど、不満の感情を抱きながら仕事を行っている。
その事実を忘れることなく、現役MRとしてMSと付き合っていきたいなぁと思う今日この頃です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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