こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
この記事を書いているのは2020年6月19日(金)ですが、いよいよ各種後発品が薬価収載&発売されましたね。
私がMS時代に売っていた薬、発売した薬など、懐かしいラインナップの後発品ばかりです。
特にゼチーアやエディロールなどは何度となく詰め込み販売をした記憶があります。(汗)
さて、これだけの種類の後発品が発売したということは、医薬品卸のMSは四苦八苦していることでしょう。
各種メーカーの後発品を各取引先に配置販売するわけですから、その労力たるや尋常ではありません。
私も元MSなので分かるのですが、毎年6月と12月の後発品発売日は憂鬱で仕方ありませんでした。
ましてや、今年はコロナ禍が終息しない状況下での後発品発売です。
自分が今でもMSだったらと思うと、正直って上手く配置販売できる自信がありません。(汗)
ですので、現場を回っているMSの皆さんには頭が下がる思いです。
この配置販売とは、まさに医薬品業界の『悪習』です。
今も昔も、私の中でこの意見だけは全く変わっていません。
そんな配置販売という名の悪習について、元MSが色々と物申したいと思います。
2020年6月発売の後発品ラインナップ
業界誌とか色々チェックしてみましたが、今回の品目数はマジで多いですね。
何もコロナ禍の最中にこんなに沢山発売しなくても…って感じです。(汗)
さて、それでは今回後発品が出る先発品とメーカー名について見ていきましょう。
・メマリー錠(第一三共)
・ザイザル錠(GSK)
・アボルブカプセル(GSK)
・セレコックス錠(アステラス製薬)
・レミニール錠(ヤンセン)
・ゼチーア錠(MSD)
・ザルティア錠(日本新薬)
・ステーブラ錠/ウリトス錠(小野薬品/杏林製薬)
・エディロールカプセル(中外製薬)
他にも色々とありますが、プライマリー市場で大きな影響がありそうな品目は上記9剤とったところでしょうか。
ちなみに、私はMS時代に上記9剤の詰め込み販売を幾度となく行いました。
仲が良い調剤薬局にて、毎月100錠くらいしか動かないゼチーア錠を月末に500錠も買ってもらったり、
他卸の帳合であるエディロールの特価見積もりを出すことで注文を強奪したり、
メマリーを安売りし過ぎて第一三共MRからクレームが入ったり、
本当に色々な思い出があります。
(もちろん悪い意味でですけど…。)
そんな思い出の品々について一気に後発品が出てくるとは、何だか時間の流れというものを感じます。
さて、これだけの品目について一気に後発品が発売されるワケですから、現場のMSにとっては超大変です。
どれもこれもプライマリー領域では売れ筋の薬剤ばかりですから、全国各地で阿鼻叫喚の1日を過ごしたMSも多いのではないでしょうか?
先発品の帳合卸は売上が減るのは間違いないし、そうでない卸にとっても後発品のシェア争いについては待ったなし状態です。
しかもコロナ禍の影響もあるものだから余計にタチが悪い。
ここ数年間の後発品発売タイミングの中では、間違いなくトップクラスの鬼畜さではないでしょうか?
後発品の数だけ配置販売することの苦しさよ
私がMSとして働いた5年間の中で、新薬または後発品が発売するときの配置販売は最も苦痛な業務の1つでした。
配置販売と言えば聞こえは良いかも知れませんが、実態はただの『詰め込み販売』です。
取引先に頭を下げ、すぐに使われる見込みのない薬剤を買ってもらう。
当然、詰め込んだ薬剤は開封されるはずもなく、数ヶ月後には返品の作業を行う。
医薬品卸のMSが返品を嫌うのはなぜ?それは再販するのが大変だからです!
この不毛な業務を全国のMSは強いられています。
例えばですが、今回発売した後発品の中で、取りあえずエゼチミブ錠(先発品はゼチーア錠)について考えてみましょう。
エゼチミブ錠だけでも、もの凄い数のメーカーが一気に発売するのです。
沢井薬品、日医工、日本ジェネリック、その他諸々。
あまりにゾロゾロと発売するものだから、業界内で後発品が『ゾロ』という仇名で呼ばれるようになったのも納得です。
(※ワンピースのロロノア・ゾロではありませんよ!)
そんなエゼチミブ錠について、医薬品卸が各社とも血眼になって配置販売します。
いや、正確には医薬品卸の上層部が現場のMSに配置販売を指示しているのです。
後発品のシェアを取り負けるなよ、と。
医薬品卸のMSが後発品の発売時に行う活動とは?【読者さんからの質問】
そんなワケで、エゼチミブ錠1つとっても各卸間で熾烈な販売合戦が行われます。
例えば、A薬局があるとします。
そのA薬局にアルフレッサ、メディセオ、スズケン、東邦、地場卸の5社がMSが来て、『エゼチミブ錠を買ってください!』などと言うは日常茶飯事です。
しかも、沢井薬品、日医工、日本ジェネリック、その他諸々のエゼチミブ錠を1箱ずつ買ってくれと頼み込むのです。
その結果どうなるか?
A薬局に医薬品卸の数だけ、そして後発品メーカーの数だけエゼチミブ錠が届けられます。
そんな大量のエゼチミブ錠を買ったところで、A薬局としては困るだけです。
完全なる余剰在庫であり、A薬局からすればいい迷惑です。
運良くエゼチミブ錠の処方が来たとしても、開封されるエゼチミブ錠はほんの一握りです。
そして数ヶ月後、エゼチミブ錠は各卸に返品される運命を辿ります。
ハッキリ言って、これではA薬局が気の毒だし、そもそも薬が可哀想過ぎます。
そして何より、MSにとっては心身共に消耗する仕事です。
実際、私も何度となく経験した仕事なので、この後発品の配置販売⇒返品という流れの不毛さがよく分かります。
これが『悪習』でなければ何でしょうか?
馬鹿げているし、狂っているし、ふざけている。
でも、MSもサラリーマンですから会社の指示には逆らえません。
だからこそ苦しいのです。
なぜ医薬品卸は配置販売をするのか?
後発品の発売時、なぜ営業現場では配置販売(詰め込み販売)の指示が出るのか?
一言でまとめるとアローアンス(利益)獲得のためです。
製薬会社が医薬品卸に支払う『アローアンス』とは?医薬品業界の真実をお伝えします!
医薬品卸と後発品メーカーとの本社同士で、
○○錠を△△軒に納入したらアローアンスとして□□万円を支払いますよ!
…といった契約を交わしているのです。
医薬品卸も年々利益が減ってきていますから、こういったチャンスを活かしてアローアンスを獲得したいのです。
MSとしてシェアを獲り負けるワケにはいかない事情を深堀していくと、最終的には会社として利益を稼げるか否かに行き着きます。
当然、後発品メーカーからしても医薬品卸のMSを活用した方が自社の後発品が普及する可能性は高まります。
つまり、医薬品卸と後発品メーカーという会社単位で見ると、この配置販売(詰め込み販売)は互いに旨味のある取引なのです。
…とはいえ、実行部隊であるMSやMRにとってはただの『嫌な仕事』でしかありません。
患者や医療への貢献なんてカケラもない、利益を稼ぐためのエゴに満ちた行為であり、まさに悪習です。
いくらアローアンスのためとはいえ、この悪習に嫌気が差しているMSは大勢います。
MSを辞めて現在はMRとして働いている私ですが、相変わらず『詰め』という2文字を見聞きする度に耐え難い不快感がこみ上げてきます。
アローアンスが無ければ医薬品卸そのものが立ち行かなくなりますが、その代償として毎度毎度MSに負荷が掛かるのもどうなんでしょうかね…。
本当に世知辛いことだと思います。
まとめ:配置販売という名の悪習に終止符を!
配置販売とはザックリ言うと詰め込み販売のことであり、詰め込み販売こそがMSを苦しめる諸悪の根源です。
その背景にはアローアンス(利益)獲得という目的が隠れていますが、現場のMSにはそんなことを考える余裕なんてありません。
会社からの指示に従い、各取引先を訪問して、ひたすら詰め込み販売を繰り返す。
詰められなければ、上司から怒られるだけです。
医薬品卸の営業所にもよるでしょうが、『詰めが出来ないMSは人間じゃない』みたいな雰囲気がマジであります。
私がMSだった頃、とにかく詰め込み販売をするのが嫌で仕方ありませんでした。
特に後発品が一気に発売される6月と12月は鬼門というか、大殺界というか、とにかく1年間の中で最も嫌なXデーでした。
詰めが上手くいかなくて怒られるのも嫌でしたが、詰めまくったMSが営業所内でヒーロー扱いされているのも同じくらい嫌でした。
まあ、今振り返ってみると詰め込み販売を通じてメンタルが鍛えられたような気もしますが、『詰め』という2文字から得た経験なんてその程度です。
正直言って、嫌な思い出しかありません。(汗)
医薬品卸がアローアンスを追求するのも分からなくはないですが、今後はこのような詰め込み販売でアローアンスを得るのではなく、何か別の手段を模索した方が絶対に良いです。
『詰め』は『悪』です。
現場のMSは口に出さないだけで、多かれ少なかれ、このような鬱屈とした感情を抱いています。
医薬品卸の上層部には、現場で働く人間(特にMS)の想いを汲み取ってやって欲しいものです。
とにかく、この医薬品業界における悪習が廃れる日が来ることを心の底から祈っております。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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