こんにちは、元MSのヒサシです。
【問い合わせフォーム】を通じて、読者さんからMSとMEの関係性について質問&意見を頂戴しました。
以下、届いたメッセージの原文です。
(※ご本人の許可を得て掲載しています!)
最近医療機器メーカーに転職して、ヒサシさんのブログを参考にさせていただいてます!
非常に勉強になることばかりで、記事を楽しみにしています。
(中略)
さて、仕事柄卸さんのMSではなく、MEの方とよくやり取りをするのですが、ぶっちゃけMSから見たMEってどんな存在なんでしょう?
業界初心者からみて、MEの方は
・MSに結構遠慮している(ような気がする)
・MSと比較して中途採用も多い
・各支店を跨いで担当がいるので、MSと指示系統がやや異なる
など少し異色な感じがします。
(医療業界初めてなのでよくわかりませんが・・・)
私の場合、ME→MS経由で病院等に発信してもらうケースが多いのですが、
ME→MSの間でうまく伝わっているところが?なところもあり、
正直現場MSから見たMEってどんな立場の人なんだろう、というのが最近気になっています。
(MSとMEの力関係や、正直めんどくさい案件で成績なりにくいの持ってくる人、とか思われてる?など、、、違ったらすみません)
もしよろしかったら次回ブログを書く際のテーマとかに使っていただけると嬉しいです!
結論から言うと、医薬品卸の社内にてMEとMSが上手く連携していないことは結構あります。
…と言うか、新人MSだった頃の私はMEのことが嫌いで仕方ありませんでしたので。(汗)
これにはMEとMSの性格的な相性や、社内での役割が違うことなどが大きく関わってきます。
医療機器メーカーで働いている質問者さん(=第三者)の視点では、もしかしたら滑稽に見えるかもしれませんが…
医薬品卸の社内において、MEとMSは必ずしも関係良好とは限らないのです。
では、なぜMEとMSとで連携が上手くいかないのか?
どんな理由によってMEとMSとの間に軋轢が生まれるのか?
そんな疑問にお答えするべく、私自身のMS経験に基づいて、MEとMSの関係性についてお伝えしていこうと思います。
初めに:『ME』とは?
医薬品卸という組織において、ME・MSは所属が異なります。
どちらも似たような名前ですが、そもそも指揮系統が違うのです。
ご存知の通り、MSは医薬品の販売を行う営業マンです。
その一方で、MEは医療機器や医療材料などを販売することに特化している営業マンです。
ME・MSともに営業関連の部署にいる身でありながら、互いに扱っている商品が違うということですね。
軍隊で例えるなら、陸軍・海軍・空軍のように役割が異なっているイメージです!
さて、大体にして『ME』とはどういう意味なのか?
これには諸説ありますが、一般的には『Medical Engineering(医用生体工学)』の略称だと言われています。
医用生体工学によって造られた、例えば内視鏡やレントゲン装置といった医療機器。
それらの医療機器についての営業活動を行う社員。
そこから転じて、医薬品卸内ではシンプルに『ME』という役職名で呼ばれるようになったのだとか。
取りあえず、医薬品卸にて『ME』と言えば『医療機器を扱う営業マン』とだけ覚えていけば良いです。
このような事情により、MEとして普段から付き合いのあるメーカーについても、MSとは全く異なります。
有名なところだと、日立とか、島津製作所とか、富士フィルムとか、オリンパスとか、キャノンとか。
その他、調剤薬局などに馴染みが深いところだと、ユヤマとか、タカゾノとか。
医薬品卸のMEは、上記のようなメーカーと常日頃から一緒に活動しています。
MSで例えるなら、色々な製薬会社のMRと一緒に活動しているようなイメージです!
ところで、MEも営業職である以上、MSと同じくノルマが存在しています。
売上・利益などはもちろん追及されますし、もし実績が悪ければ上司(会社)から叱責もされます。
そういった意味では、MSとの共通点も多いです。
このことから、詳しくは後述しますがMEはMSと連携して、高額な医療機器が売れそうな案件探しのために同行することも結構あります。
医薬品卸のMEは広域を担当している
単刀直入に言うと、MEの担当範囲は広いです。
単純な担当面積だけを言えば、MSの比ではありません。
MSが1人で○○市を担当しているとしたら、MEは1人で△△県を担当しているような感じですね。
従いまして、医薬品卸における社員数という意味では、MEはMSよりも圧倒的に人数が少ないです。
ただし、これにはもちろん理由があります。
多くの場合、医療機器は医薬品よりも高額です。
なおかつ、そう簡単に買い換えられるような代物でもありません。
例えばですが、消化器内科で使われる内視鏡などの医療機器は、1台だけで1,000万円を超えるようなこともあります。
あまりにも高額なものだから、医師や薬剤師であってもポンポン買うことなんて不可能なのです。
このように、医療機器に関する案件そのものが少ない。
だから、MEも少人数でこと足りる。
医薬品卸(会社)としては、そのように考えているワケですね。
しかしながら、いくら全体の案件数が少ないとはいえ、広域を担当していると何かしらの案件が出てくるんですよね。
A病院ではレセコンの買い替えを考えているだとか。
Bクリニックでは院内機器を最新式モデルに切り替えることを検討しているだとか。
C薬局では現在使っている分包機の性能に満足できていないだとか。
こういった案件について、確かに狭い地域だけを見ていたら中々見付けられないことでしょう。
そりゃ市町村レベルの広さでは、医療機器の案件が次々に出てくるはずないよなぁ…
しかし、例えばですが県レベルの広さを担当してみるとどうか?
そのくらい広い範囲を見渡してみると、やはり1つや2つくらいは医療機器の案件が見付かるものだそうで。
このことから、MEはMS以上に担当エリア内で起きていることを把握する能力が求められるとも言えそうです。
ただし、広域担当であるが故の宿命なのか、MEが1つの取引先に頻回訪問することはハッキリ言って難しいです。
では、MEはどうやって担当エリア内の状況把握を行うのか?
ここで重要となってくるのが、社内にて担当エリアが被っているMSとの連携です!!
取引先への単純な訪問回数で言えば、MEよりMSの方が多いですからね。
医療機器メーカーから情報を仕入れるという手段もありますが、MEにとっては自社のMS経由で情報を入手する方が効率的なのです。
医療機器を巡るMSとMEの利害関係
医薬品卸によって多少異なるかもですが、過去に私が働いていた会社では、医療機器が売れればMSの実績としてもカウントされる仕組みがありました。
例えばですが、ある開業医にて100万円の電気メスが売れたとします。
この場合、MEにとって100万円の販売実績が立つのと同時に、MSとしても100万円の販売実績としてカウントされます。
これね、売上・利益という意味ではMSにとって凄くデカいんですよ。
MEから見たら大したことのない金額かもしれませんが、MSにとっては100万円という売上は大金です。
大体にして、100万円分の医薬品を売るのって結構大変ですからね。
しかも、場合によっては【急配】や【返品】という面倒くさい業務を強いられることもあるので。(汗)
そういった意味では、数が少ないとはいえ、取引先に医療機器を納品するような案件はMSにとっても貴重なワケです。
さて、ここで忘れてはいけないのは、医薬品卸は『卸売業者』であるという点です。
つまり、A社が医療機器を卸さないのなら、その隙にB社が取引先に営業をかけて卸す。
早い話、“卸の敵”は卸なんです。
このように卸vs卸の構図がある以上、医療機器の案件もある意味では早い者勝ちな側面があります。
だからこそ、MSとしても医療機器の案件は他社なんかには譲れないのです。
もし自分(自社)が黙って見ていたら、他社がガッポリ儲けるだけですからね。
当然、MEにとっても自社を通じて医療機器が売れるに越したことはない。
だって、それがMEの仕事なんですから。
いかがでしょうか?
MSも、MEも、互いに自分たちを介して医療機器が売れることを望んでいる。
なぜなら、そうすることで互いの実績となり、社内で評価されるから。
付け加えると、他社を儲けさせてやるつもりは毛頭ない。
つまり、MSとMEとで“利害”が一致しているワケです!!
以上のことから、MSとMEは一致団結して医療機器の案件発掘のために協力するのです。
MSは、自分にとって顔が利く取引先へとMEを連れていく。
医療機器のことは専門外でも、MEを連れていけば、MEが何らかの案件を見つけ出してくれるかもしれない。
そのような期待を込めて、MSは懇意にしている医師や薬剤師にMEを紹介し、医療機器についての案件発掘に努めるのです。
これはMEにとっても願ったり叶ったりで、MSが口利きしてくれる取引先であれば、医療機器の話もしやすいというもの。
ME単独ではロクに話を聞いてくれないような取引先でも、MSの仲介があればスムーズに仕事の話ができる。
これこそがMSとMEにおけるWIN-WINの関係であり、医薬品卸としては理想形とも呼ぶべき活動です。
軍隊で例えるなら、陸軍と海軍が協力して相手拠点を攻略しようとしているイメージです!
…とまぁ、ここまでMSとMEの一般的な協力体制について書いてきましたけど、実際にはこのような教科書的な展開にはならないことも多いです。
率直に言うと、全てのMS・MEが良い関係ばかりとは限らないのです。
互いの“利害”が絡む以上、そこには負の側面も付随してきます。
まさにその点こそ、今回の質問をしてくれた読者さん(=医療機器メーカーさん)が知りたいところかと思います。
…ということで、ここから先は私自身のMS経験に基づいて、当時の苦い思い出を綴っていきます。
MSとMEの仲が良好とは限らない!
私は新人MSだった頃、担当エリアが被っているMEのことが嫌いで仕方ありませんでした。
そのMEは当時40歳くらいのオジサン(独身)で、とにかく性格に癖がある人だったんですよね。
悪い意味で、我が強いというか。
いい歳して、独身なのも納得というか。
加えて厄介だったのは、そのMEはこれまた悪い意味で体育会系的な思考の持ち主だったという点です。
とにかく、新人を含む若手MSに辛く当たるような人物だったんですよね。
よくいるじゃないですか、年上にはヘコへコするけど、年下にはやたらとマウントを取りたがる人って。
医薬品卸には年功序列な雰囲気があることも相まって、勤続年数が長い社員ほど横柄だったりすることも少なくないのです。
所属に関わらず、社歴が長いと社内での発言力が強かったりもします!(汗)
そのMEとは、私がMSとして3年目の時期まで一緒に仕事をしていたのですが…
正味な話、そのMEと一緒に過ごした約3年ほどの間は、私にとって苦痛でしかなかったです。
何と言っても、社内だけではなく同行中においても、私はそのMEから幾度となく以下のような言葉を叩き付けられましたので。
すいません、当時のことを思い出しながらこの記事を書いているのですが、段々とムカついてきました。(汗)
要するに、私はそのMEと不仲だったんですよ。
おかげ様で、私個人としては入社早々『こんなMEと一緒に活動するくらいなら医療機器なんて売れなくても構わない』なんて風にも思いましたので。
結局のところ、MSもMEも“人間”なんですよね。
人間である以上、相性の良し悪しは必ずある。
好き嫌いだってある。
選り好みだってする。
社内での指揮系統も異なる以上、もし関係が悪ければ必要以上に協力する義理もない。
それどころか、何らかの形で相手に仕返しをしてやりたい思うことすらある。
正直に言うと、私はそのMEのことが嫌い過ぎて、こんなことを考える場面も多かったです。
当時の私は20代の前半~中盤であり、若さも相まって年上社員には反発しがちな時期でした。
今にして思えば、これはMSとして(…と言うか組織人として)失格の考え方だったと思います。
私自身も知らない間に、私はMSとして数多くの医療機器案件を見逃していたことでしょう。
しかしながら、そんなことなんてどうでもいいと思えるほどに、私はそのオッサンMEに対して嫌悪感を募らせていたのも事実です。
そのような経緯もあり、MSとMEの連携という意味では、ハッキリ言って最悪に近いレベルだったと思います。
情報不行き届きはザラにあったと思いますし、営業所としてMSとの同行強化月間みたいなものを開催しても、私はテキトーな理由を付けてMEとの同行を断っていたので。
MS(医薬品卸)を辞めた今だからこそ、当時の体験をこうして冷静に言語化できているワケですが…
当時の私にとって、MEとは自分の気分を害する厄介者くらいにしか思っていませんでした。
これが偽らざる私の本音です。
口汚い表現ばかりでスイマセン…(汗)
ただ、そのオッサンMEが他県に異動して以降、新しく赴任してきたMEとは割と良い関係だったように思えます。
具体的には、MSとして4年目~5年目くらいの時期ですね。
毎月1回~2回くらいの頻度でMEとの同行をしていましたし、あまり高額ではないものの、MEと連携して医療機器・医療材料を売ることにも何度か成功しました。
MSとして取引先にアポイントを取って、MEと一緒に医療機器のデモをしたりもして、そのまま成約に至った案件もありましたし。
そう考えてみると、やはりMSとMEの関係には性格的要素が大きく絡んでくるのかなぁと思います。
MSは忙しくて医療機器の案件にまで手が回らない?
これも私自身の経験談なんですが、やっぱりMSって忙しいんですよね。
明けても暮れても【急配】【返品】【出荷調整】といった仕事が降ってくる。
MSとして【タチの悪い取引先】の相手もしないといけない。
月半ばになると、上司やプロモーターから【施策】の進捗状況について追及される。
月末ともなると、医薬品卸では恒例とも言うべき【詰め】の仕事が待っていて、目の前のノルマをこなすだけで精一杯。
このような日常の中で、心身共に疲れ切っているMSも少なくありません。
そんな状況にも関わらず、医薬品だけではなく医療機器のことにまで気を回すのって、ぶっちゃけ簡単ではないです。
急配にせよ、返品にせよ、即対応しなければ取引先から叱責され、場合によっては取引金額が凹む事態となります。
その反面、医療機器の案件については後回しにしても特に問題はありません。
敢えて言うなら社内で『お前、医療機器が売れてねーぞ!』といった指摘を受ける可能性はありますが、大惨事というレベルにまで事態が発展する可能性は低いです。
さらに極端なことを言えば、MSとしては医療機器が売れずとも、医薬品の販売だけで売上・利益の目標計画を達成できれば良いのです。
よって、MSにとって医療機器に関する仕事の優先度は、それほど高くないと言えます。
もちろんMEと協力して医療機器が大量に売れれば、MSとしての評価も高くなります。
ですが、ハッキリ言って現場のMSにはそこまでの余裕が無いのも事実です。
もし仮にMEから医療機器に関する話をされたとしても、耳には入ってくるけど、頭には入ってこない…なんてこともあります。
“心ここにあらず”というヤツです!
MSだって馬鹿ではありませんから、医療機器が売れることによる旨味は理解しています。
もし1,000万円レベルの医療機器が1つでも売れれば、MSの評価指標である売上・利益ともに爆上がりしますからね。
しかし、そのことを頭では理解していても、医療機器の仕事については二の次にされがちなのが実情なんですよね。
仮にMSとMEが不仲ではなくても、MS特有の激務っぷりが医療機器に関する仕事を遠ざけてしまうのです。
ただし、こう思うのは私自身が優秀なMSではなかったからだとも思うのです。
結局のところ、私はMSとしての仕事に疲れ、挫折し、転職をした人間です。
元MSの本音!医薬品卸のMSを辞めたいと思った理由について語る!
本当に優秀なMSは、医薬品だろうと医療機器だろうとガンガン売ってきます。
彼らは営業としての能力が優れているだけでなく、仕事に臨むモチベーションも高いのです。
よって、質問者さんのような医療機器メーカーの人たちにとっては、『何をするか』ではなく『誰を頼るか』という視点で仕事を組み立てていくと良いのかもしれません。
いかにして医療機器への関心度が高そうなMSを見分けるか。
いかにしてMEとの関係が良さそうなMSを見付けるか。
いかにして優秀そうなMSと手を組むか。
このような意識のもとでMEまたはMSと接してみれば、医療機器メーカーとしての仕事の流れも変わってくるのではないでしょうか?
まとめ:MSとMEは互いの役割が違う!優先するべき仕事も違う!
医薬品卸という会社において、MSもMEも営業を生業としている人間です。
その一方で、社内での指揮系統は全く異なります。
MSは医薬品を扱い、MEは医療機器を扱う関係上、互いの利害が必ずしも一致するとも限りません。
MS視点では、確かに医療機器が売れるに越したことはない。
しかしながら、MSとして最優先すべき仕事は医薬品の販売です。
医療機器の販売を最優先しながら動いているMEとは、見ている景色が違うとも言えます。
このように互いが置かれている状況の違いが、結果的に利害の不一致へと繋がっていくのだと思います。
医薬品卸に限ったことではありませんが、会社という組織は一枚岩ではありません。
社内にて部署間の諍いがあるように、MSとMEも指揮系統が異なる以上、立場的に相容れないことがあるのです。
社内において、互いの役割が違う。
役割が違うから、優先するべき仕事の内容も違ってくる。
そんな中でも組織のしがらみを超えて、全てのMS・MEが互いに協力し合えるかと言うと、それはやっぱり難しいことなのかなと思います。
この辺りは“会社員あるある”の一種なのかと…(汗)
付け加えて厄介なのは、MSもMEも人間である以上、性格的に合わないこともあり得るということです。
新人MSだった頃の私がそうだったように、地域によってはMEと不仲なMSも少なからずいることでしょう。
質問者さんのように医療機器メーカーの人(=第三者)の目から見て、もしMSとMEの関係が上手くいってなさそうなら、少なくともその地域においては何らかの社内的な不和があるのかもしれません。
以上、MSとMEの関係性について、少しでも参考にしていただければ幸いです!
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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