公正取引委員会によるダイコクへの立ち入り調査は医薬品卸にとって朗報かも?

医薬品卸の今後

こんにちは、元MSのヒサシです。

2022年の4月19日、ドラッグストアチェーンのダイコクに公正取引委員会(以下、公取こうとり)が立ち入り調査を行ったと報じられました。

何でも、閉鎖する店舗の在庫(医薬品や日用品)について、納品業者に対して『不当な返品要求』を行ったのだとか。

その一連の行為が独占禁止法における『優越的地位の濫用らんよう』に該当するとして、公取による調査が始まったみたいです。

公取が介入するくらいですから、ダイコクによる返品要求はかなり理不尽なものであったことが窺えますね。

業界誌のみならず、一般誌やTVニュースでも報じられたことから波紋を呼んでいます。

 

ダイコクに立ち入り、閉鎖店舗の在庫返品要求か(日刊薬業)

ダイコクに立ち入り検査 公取委、在庫返品要請疑い(産経新聞)

 

報じられている内容を読む限りでは、ダイコクから医薬品卸への返品要求も少なからずあったものと思われます。

なおかつ個人的に驚いたのが、独占禁止法という法律において『優越的地位の濫用らんよう』というものが規制されていたという点です。

簡単に言うと、何らかの取引を行う業者間にて、立場が強い側の横暴を抑止するためのルールですね。

ヒサシ
ヒサシ

こんな法律が世の中に存在していたのか…!!

…といった感じで、個人的には凄く驚きました。

そこで、これも良い機会だと思って『優越的地位の濫用らんよう』について調べてみたんですよ。

私自身もMS時代に幾度となく経験しましたが、ダイコクに限らず、理不尽な返品要求を突き付けてくる取引先は多いですからね。

その結果、医薬品卸にとっては大きな武器ともなり得る法律であることが分かりました。

返品】にせよ、【急配】にせよ、あまりにも度が過ぎる要求は独占禁止法の『優越的地位の濫用らんよう』に抵触している可能性大です。

このことから、条件さえ満たせば法律に則って取引先を罰することも可能だと考えられます。

独占禁止法を上手く活用すれば、医薬品卸を苦しめている理不尽な取引先を減らすことが出来るのか?

その辺りの事情について、今からご紹介していこうと思います。

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独占禁止法の『優越的地位の濫用らんよう』とは?

優越的地位の濫用らんよう

読んで字の如くですが、これは取引上の優位な立場を利用して、相手業者に不利益を与える行為を指します。

公正取引委員会のホームページ】では、以下のように定義されています。

優越的地位の濫用らんようとは、

自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、

取引の相手方に対し、その地位を利用して、

正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為のことです。

この行為は、独占禁止法により、不公正な取引方法の一類型として禁止されています。

引用:公正取引委員会 ホームページ

今回のダイコクに関する一件では、閉鎖店舗の在庫を返品したいとダイコク側が要求したことについて争点とされています。

具体的な在庫の量・種類などは分かりませんが、医療用医薬品に限って言えば、期限切迫品のような廃棄処分間近なモノも含まれていたと考えられます。

この仮定のもとで情報を整理していくと、ダイコクは業者側(医薬品卸など)に商品の廃棄処分を肩代わりさせようとしたとも捉えられます。

廃棄処分の肩代わり。

それは即ち、相手業者に“不利益”を与える行為です。

この一連の流れについて、ダイコク側は業者側に自分たちの要求を呑むように強く迫ったのでしょう。

これこそが、まさに『優越的地位の濫用らんよう』に抵触した部分なのだと思います。

もしかしたら、返品要求を断ったら何らかのペナルティを課すことを業者側にチラつかせていた可能性すらあります。

ただし、これはダイコクに限った話ではなく、全国各地にありふれている様な話です。

医薬品に関しては、買い手の立場が非常に強いです。

私は医薬品卸で働いていた人間ですので、日用品に関しては詳しくは知りませんが、少なくとも医薬品に関してはそうです。

注文を減らすことを仄めかして、無理難題を押し付けてくるなんてことはフツーにあります。

 

MS時代に体感した“厄介な取引先”の特徴5選!彼らの悪意に振り回されてはダメだ!

 

医薬品業界の中では、悪い意味で根付いてしまっている商習慣。

その商習慣に沿って、いつもと同じように返品要求をしたであろうダイコク。

ただ、今回ばかりはダイコクの思惑通りにはならなった。

独占禁止法に照らし合わせて、まさか反撃してくる業者が出てくるとは夢にも思わなかった。

公取が動くような展開になること自体、ダイコクとしては予想外だったのではないでしょうか?

ダイコクがどのような形で返品要求を行ったのか、具体的なことは不明です。

ですが少なくとも、返品要求を突き付けられた業者側は『これは不当な行為である』と判断したのでしょうね。

独占禁止法の『優越的地位の濫用らんよう』に該当すると考えたその業者は、公取へと相談を持ちかけた。

その結果、事態を重く見た公取がダイコクへの調査に乗り出した。

詰まるところ、そういうことなのでしょう。

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考察:なぜ公正取引委員会が動いたのか?

公取にしても、何の理由もなくダイコクへの立ち入り調査なんてするはずがありません。

それは即ち、公取にとって『ダイコクが独占禁止法に抵触している』という確証があったことを意味しています。

では、なぜ公取はダイコクの不当行為を知るに至ったのか?

業界誌・一般誌などで報道されている限りでは、具体的なことは全く明らかになっていません。

誌面に載っているのはダイコクから出入り業者への要求のみ。

つまり『閉鎖する店舗での在庫を返品しようとした』ということだけ。

この事実を、公取はどのようにして知ったのでしょうか?

多分ですけど、これは誰かが公取へと告発したからだと思うのです。

どこの誰かは分かりませんが、ダイコクによる理不尽な返品要求を見かねた人間がいた。

その人間がダイコクの悪事について公取へとチクった。

そして、そのことが今回の立ち入り調査の発端となった。

私にはそのように思えるのです。

閉鎖されるダイコク店舗での返品云々について、公取に告発したのは一体誰なのか?

社内での方針を憂いたダイコクの従業員か?

返品要求を突き付けられた出入り業者か?

前者はともかく、もし後者だとしたら、ダイコクへの恨みが深い人間であることは想像に難くないです。

私もMSだった頃に幾度となく経験しましたが、返品の仕事は本当に大変なんですよ。

日用品の返品については門外漢なのでコメントは控えますが、少なくとも医療用の医薬品に関してはマジで辛いです。

MSとしては心身ともに疲弊する業務の代表格ですからね。(汗)

 

医薬品卸のMSが返品を嫌うのはなぜ?それは社内での手続きが大変だからです!

 

そんな返品を大量に、なおかつ一方的に押し付けられたとしたら、聖人でもない限り心が荒みます。

MS(営業)としては、はらわたが煮えくり返ることも珍しくありません。

取引先への怒りを通り越して、恨みの感情が生まれることすらあります。

この恨みは思いのほか強烈でして、一線を超えると取引先が相手だろうと容赦なく報復に転じるMSもいるくらいです。

ヒサシ
ヒサシ

人間の恨みほど恐ろしいものはない…

今回のダイコクに関する一件にて、結局のところ公取に告発したのが誰かなのかは不明です。

ですが、元MSとしては告発した人の気持ちも何となく分かるのです。

日用品・医薬品などに関わる業者たちに理不尽な返品要求を突き付けて、しかもそれがまかり通ると考えているダイコク。

そんなダイコクのことが許せない。

何としてもダイコクを罰してやりたい。

願わくば、今回のような返品要求が二度と起こらないようにしたい。

そのように考えた末、ダイコクに最大限のダメージを与えるべく選んだ手段が“公取への告発”だったのではないでしょうか。

そして結果だけを見れば、ダイコクにとっては大変苦しい展開となりました。

何と言っても、一般誌やTVニュースでも取り上げられるほどの騒動にまで発展したワケですからね。

公取へと告発した本人としては、今の状況を見て溜飲が下がる心地ではないでしょうか?

ダイコクの事例は“氷山の一角”である!

今回はダイコクのことで騒がれていますが、ダイコクのように理不尽な返品要求を突き付けてくる取引先は全国各地に大勢います。

少なくとも、医薬品に関してはそのように断言できます。

これまた私の経験談で恐縮ですが、医薬品卸のMSとして働いていた頃にそういった輩を腐るほど見てきましたので。(汗)

顧客という立場に甘えて、医薬品卸(出入り業者)に無理難題を突き付けてくる取引先たち。

返品という形で、薬の廃棄処分を肩代わりさせようとするのは朝飯前。

いや、返品に限らず、彼らは【急配】や【出荷調整】に関しても容赦がない。

これらの業務に付随す業者側のコストやリスクなんてお構いなし。

彼らは医薬品卸などの出入り業者たちに対して、自分たちの要求を呑むのは当然のことだと本気で思っているのです。

この前提で考えてみると、もうこの時点で独占禁止法における『優越的地位の濫用らんよう』に抵触していますよね。

だって、出入り業者に対して不利益を与える行為をしているワケですから。

程度の差はあれど、ダイコクと同類の取引先は枚挙に暇が無いのです。

そう考えてみると、ダイコクの事例は業界内における氷山の一角に過ぎない。

いや、もしかしたらダイコク以上に横柄な取引先もいるかもしれません。

病院や調剤薬局といった医療機関の中には、期末になると膨大な量の返品依頼をしてくる施設があるのですが…

これもまた、今回のダイコクに通じる匂いがします。

期限切迫品や、何世代も前の包装品。

再販は極めて困難な医薬品。

それらを返品依頼することは、薬の廃棄処分を業者側に肩代わりさせようとしているのと同じです。

それは即ち、独占禁止法の上では『優越的地位の濫用らんよう』に他ならない。

今回はダイコクだけが注目を集める展開となりましたが、ダイコクのように顧客としての優位性を笠に着て、筋が通らない要求を突き付ける人たちは少なくないのです。

どうすれば公取こうとりは動いてくれるのか?

公正取引委員会のホームページを見てみると、通報・相談の窓口が載っている箇所があります。

立場や所属を問わず、もし独占禁止法に抵触していると思しき事案があれば、ここに電話をすれば色々と話を聞いてもらえるというワケですね。

(※詳しくは下のリンク先をご覧ください!)

 

独占禁止法に関する通報・相談窓口(公正取引委員会)

 

さらに、通報者あるいは相談者は『公益通報者保護法』という法律によって安全を保障される仕組みのようです。

早い話、公取の窓口に電話しても通報者のプライバシーは守られるということですね。

このような仕組みがあるのなら、ダイコクに限らず理不尽な業者(あるいは医療機関)のことをバンバン通報してみても良いのかもしれません。

しかし、通報したからといって公取が100%動いてくれるかと言うと、それはまた別の話かと思います。

ダイコクへの立ち入り調査に関しては、公取が『これは悪質性が高い』と判断したからこそ立ち入り調査が実施されたのだと思います。

もしかしたら、ダイコクが広域展開しているドラッグストアチェーンであり、いわゆる組織的な行為であったことも影響していたのかもしれませんし。

公取にしたって、決して暇ではないはずです。

仮にですけど、個人経営の調剤薬局などが大量の返品要求をしてきたとします。

例えばですが、担当のMSがそのことを公取の相談窓口に通報したら、一体どうなるでしょうか?

公取という組織の仕組みを考えれば、取りあえず話だけは聞いてくれると思います。

その一方で、わざわざ公取が通報対象の調剤薬局にまで赴いて、しかも立ち入り調査までするでしょうか?

可能性は0%ではないにせよ、おそらく実現は困難ではないでしょうか?

ヒサシ
ヒサシ

公取は民間企業ではなく、あくまで行政の組織だからなぁ…

公取の内部にて、通報対象の悪質度をどのように判断しているかは不明ですが…

もし個人経営レベルの調剤薬局や開業医をいちいち通報される度に調査なんてしていたら、いくら人手があっても足りないはずです。

少なくとも、公取が調査するに値するだけの証拠が揃ってないと、まともに対応してくれるかどうかも怪しいです。

例えばですが、スマホやICレコーダーなどで録音した音声データなどを提出して初めて、公取側は聞く耳を持ってくれないのではないでしょうか?

警察に被害届を出したとしても、ロクに捜査もされず有耶無耶うやむやになることってあるじゃないですか。

それと同じような現象が、公取でも起こり得るのではないかと思うのです。

実際のところ、公取のホームページをよくよく見てみると、この仮説を裏付けるような箇所があるんですよね。

令和2年度において、独占禁止法についての通報受理件数が11件だったとされています。

その一方で、調査後の措置件数は0件と記載されています。

引用:公正取引委員会 ホームページ

このことから言えるのは、公取に通報したからといって、公取が何らかの措置を講じてくれるとは限らないということです。

もしかしたらホームページ上には載っていないだけで、通報の対象(医療機関など)に対して、公取から口頭で注意くらいはしてくれるのかもしれませんが…

もしダイコクと同様、立ち入り調査が実施されるレベルを目指すとなると、かなりハードルは高そうな印象です。

よって、もし本気で独占禁止法への抵触を訴えるなら、通報する側としては相応の準備をした上で臨まないと、公取を動かすことは難しいのかもしれませんね。

最後に:医薬品卸が取引先を懲らしめることは不可能ではない!

今回のダイコクに関する報道を見て、医薬品卸にとっては朗報であると思ったんですよね。

なぜかと言うと、医薬品卸のような業者側から、取引先を懲らしめることが可能であることが証明されたからです。

私の医薬品業界でのキャリア上、これは前例のなかったことです。

それだけに、このような前例が生まれたことは、今後の医薬品卸&取引先に与える影響が大きいのではないでしょうか?

再三のことで恐縮ですが、医薬品卸にとって天敵とも呼ぶべき取引先って多いんですよ。

それはもう、本当に、本当っっっ当に多いです。

返品・急配・出荷調整、その他諸々。

これらの場面で、自分勝手な都合だけを押し付けてくる取引先たち。

もし先方からの要求を断れば、注文(売上・利益)を減らすことをチラつかせて、担当MSの立場が悪くなるようなことをほのめかしてくる。

ハッキリ言って、これは取引上の優位性を悪用した脅迫でしかありません。

しかも、担当MSの人格までも否定し、これでもかと罵倒するというオマケつき。

その結果、医薬品卸としては渋々ながらその要求を呑み、場合によっては“泣き寝入り”することも珍しくなかったんですよね。

私は医薬品卸のMSとして働き始めた時から、こういったパワーバランスについて疑問を感じていました。

優良な取引先のためならばともかく、なぜ理不尽な取引先のために割を食う必要があるのか?

MS(医薬品卸)のことを雑に扱う取引先のために、なぜ尽力してやる必要があるのか?

このような悶々とした感情を抱えているMSは、きっと全国各地に多数いると思います。

ヒサシ
ヒサシ

今日もどこかで、タチの悪い取引先への対応をしているMSがいることでしょう…

取引先からどれだけしいたげられても、医薬品卸側はどうすることも出来ないのか?

取引を止めるなどして、関係を完全に断つという手段しか残されていないのか?

いやいや、決してそんなことはない。

もし怒りや恨みの感情が限界を超えたのなら、取引自体は継続しつつも、取引先に一矢報いるための手段はある。

その手段の1つが、公取を動かすことなのだと思います。

もしかしたら後々、公取に通報したことが取引先にバレるリスクだってあるかもしれない。

医薬品卸の社内でも、物議をかもす可能性だってあるかもしれない。

しかし、いよいよ我慢の限界だと感じたら、思い切って公取に通報してみても良いかもしれません。

公益通報者保護法という、通報者の身を守ってもらえる仕組みもあることですし。

横暴な取引先を懲らしめるための手段として、独占禁止法への違反を訴えることは理に適っています。

実際に活用するかどうかは別として、このやり方を覚えておいて損はないでしょう。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

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