製薬協の田中常務理事が語る『MRの倫理観』とは何だろうか?

MRの仕事

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

2022年の9月16日、ミクスオンラインのニュース欄に日本製薬工業協会(通称:製薬協)の田中常務理事が退職するとの記事が載りました。

その記事内にて、田中常務理事がMRは倫理観を持つことが大切である!という趣旨の発言をしたと報じられています。

 

製薬協・田中常務理事が退任挨拶 MRは倫理観を発揮せよ! その先に社会的地位向上の道が必ずや開ける

 

さて、MRの倫理観とは何でしょうか?

会社が定めたコンプライアンスを遵守することでしょうか?

社会的通念上、誰が見ても正しいとされる行動を心掛けることでしょうか?

これは別に、田中常務理事を否定する意図で言っているワケではありません。

倫理観という3文字が具体的に何を指しているのか、私個人としてはイマイチ判然としないのです。

一応、何となく患者や医療のために貢献しようとする意志という意味合いであることは理解できます。

言い換えるなら、利他的な価値観とでも言いましょうか。

ですが正味な話、この倫理観って曖昧なものだと思っています。

具体性に欠けると言うか、何と言うか。

こういった無形の概念って、人によって捉え方も異なりますし。

ヒサシ
ヒサシ

悪い言い方をすると、何だか“都合の良い言葉”って気もする…

MRとして持つべき倫理観とは、具体的にどのようなものでしょうか?

そして、製薬会社はMRの倫理観を養うような研修を実施しているのでしょうか?

その辺りの事情について、一介のMRによる視点から記事を書いてみました。

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『倫理観』の定義は曖昧である

一見すると綺麗で、いかにももっともらしい響きがする倫理観という3文字。

では、世間一般で言われている『倫理観』とは、一体どういった意味なのでしょうか?

…という事で、辞書を引いてみました。

倫理観(りんりかん)とは、倫理(人として守るべき善悪や是非の判断や判断基準)についての捉え方・考え方、を意味する語。倫理に関するものの見方。

万人が同意する普遍的な善悪・正邪よりも、むしろ立場によって意見の別れる(対立が生じる)ような話題を扱う文脈で用いられることが多い。

たとえば尊厳死の問題など。

(引用:weblio辞書

うーむ、善悪の判断基準か。

なおかつ、立場の違いによって解釈が異なる場合もあり得ると。

つまり、絶対的な正解は無いというワケですね。

…となると、この倫理観という言葉をMRという職業に当てはめて考えるのは、意外と難しそうです。

だって、善悪の判断基準なんて人によって全然違うじゃないですか。

いや、人だけではなく、会社によっても違いますし。

A社は○○してもOKと言うけど、B社は○○してはダメだとか。

Aさんは△△しろと指示するけど、Bさんは△△という行為は適切ではないと主張するだとか。

MRのみならず、多種多様な職業の人たちが日々こんな状況に晒されているのだと思います。

要するに、『倫理観』というのは曖昧な言葉なんですよね。

明確な定義があるワケじゃない。

だからこそ、社員たちの中で統一感を持たせることも難しい。

それが『倫理観』という3文字に関する実情なのかと思います。

このブログでは以前、MRドリルの倫理問題について違和感があるという記事を書いたことがありましたけど、まさにそれが最たる例なのかと。

 

MR基礎教育年次ドリルに登場した『倫理の問題』に関する違和感を語りたいッ!

 

倫理観の中身について、絶対的な正解は無い。

従って、倫理観の解釈は個々人によって大きく異なる。

そこに営利企業である製薬会社特有の薬が売れさえすれば良いという思惑が加わり、現場のMRは混乱する。

それが巡り巡って、これまでに業界内で数々の不祥事が引き起こされる温床となった。

そう考えてみると、倫理観とは一体何なのでしょうね?

不祥事を起こさないこと倫理観があると断言しても良いのでしょうか ?

個人的には、そう単純な話でもないと思っています。

ヒサシ
ヒサシ

倫理と言うか、道徳心に欠けるMRは一定数いるからね!(汗)

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MRとして『倫理観』の社内研修を受けたことが無い

MRに転職して以降、私自身は『倫理観』の3文字について研修らしい研修を受けた経験がありません。

もしかしたら、新卒入社のMRたちは新人教育の研修などで、何らかの指導を受けるのかもしれませんが…

私が転職組のMRだからなのか分かりませんけど、少なくとも私自身はそうです。

MRに転職後のことを振り返ってみると、疾患や自社製品に関する研修を受けたことばかりが頭に浮かびます。

研修の担当者が今日の研修テーマは“MRの倫理観”についてです!などと言っている場面は、どれだけ記憶を辿っても出てこないです。(汗)

一応、コンプライアンスに関する研修であれば、今までに幾度となく受けてはきました。

コレをやったら、販売情報提供活動ガイドラインに抵触するから注意しろとか。

アレをやったら、社内ルールを逸脱するから気を付けろとか。

とにかく、あれがダメ、これがダメ。

ここまではセーフだけど、ここからはアウト。

そういった類の研修であれば、これまでに数えきれないほど受けた経験があります。

ヒサシ
ヒサシ

不正を犯したMRが現れる度に、再発防止のためにコンプライアンス研修が実施されているような気がする(汗)

では、こういったコンプライアンス関連の研修が、果たしてMRの倫理観に関する研修と言えるのでしょうか?

私個人としては、必ずしもそうではないと思っています。

大体にして、製薬会社がMR対象のコンプライアンス研修を行うのはなぜでしょうか?

私見ですが、それは『会社として不利益を被りたくないから』だと思っています。

患者のためとか、医療のためとか、それも決して嘘ではない。

ですが、そんなご立派な言葉も、半ば方便と化しているような気がしないでもないです。

製薬会社がMR(社員)に対してコンプライアンス遵守を求める真の理由とは、MRが不正を犯した際の面倒事に巻き込まれたくないからです。

何らかの不正が発覚すれば、MR本人のみならず、その上司、さらには本社まで責任を問われる。

場合によっては、会社として謝罪会見するハメになる。

そんな事態になったら会社としてイヤだから、コンプライアンスの研修を行っているだけなのかと。

ヒサシ
ヒサシ

会社としては、前もって不正行為の芽を摘みたいのだと思います!

何がどうなったら、不正行為と判定されるのかをハッキリさせる。

そういった意味で、これは確かにMRの判断力向上に一役買っているとは思います。

しかしながら、世間一般における倫理観の醸成に寄与しているかと言うと、またちょっと違う気がします。

その証拠に、社会人として品行方正であるとはお世辞にも言えないMRもいますよね。

誰かに迷惑を掛けることについて、何の抵抗もなかったりとか。

このブログ内での具体例を挙げると、病院の駐車場で乱暴な運転をするようなMRなどですね。

 

病院の駐車場にて乱暴な運転をしているMRについて思うこと

 

乱暴な運転自体もダメですけど、さらに問題なのは患者の身を危険に晒す可能性があるという点です。

これは社会通念上、誰が見ても倫理観を欠いている行為だと言えます。

さらに深読みすると、もし全てのMRが患者第一という価値観を持っているならば、こういった出来事は起こるはずがないのです。

では、製薬会社はMRに向けて病院の駐車場では患者さんに配慮して安全運転しましょう!みたいな研修を行っているでしょうか?

いやいや、決してそんなことは無いですよね。

むしろ、そんな運転マナー云々の研修なんてする暇があったら、それこそMRとしての営業実績を伸ばすための研修を行っている気がします。

その他にも、MRとして患者や医療に貢献する云々の倫理的行為って、単純な情報提供活動以外にも色々とありますよね。

クリニックの待合室が混んでいたら、患者さんが座れるように椅子を譲ってあげるとか。

院内のエレベーターが混んでいたら、患者さんや医療従事者に配慮して階段を使うとか。

医療従事者の意志を尊重して、彼らにとって迷惑であろう訪問活動は慎むだとか。

それこそ、こうやって挙げ出したらキリが無いくらいです。

でも、こういった類の内容を研修で習ったことって、ぶっちゃけ私は経験ないです。

ヒサシ
ヒサシ

他社ではMRとしての倫理云々の研修を実施しているのだろうか…?

まあ、製薬会社も営利企業ですから、MRに対して倫理観よりも営業能力を求めるのは当たり前の話なのですが…

こうして考えてみると、製薬会社にとって『倫理観』とは一体何なのだろうか…なんて風に思ってしまいます。

『倫理観』がぶっ飛んでいるMRほど高成績?

社内にて営業実績が毎回上位に食い込んでくる超優秀MRって、人間的にはかなり曲者タイプな人が多い気がします。

勿論これは私の主観ですし、あくまで“曲者”なだけで、彼らが“悪人”だとは全く思いません。

ですが、彼らは往々にしてMRとしてルール違反するギリギリの部分を攻める傾向があるような気がしてなりません。

訪問禁止の施設に出禁覚悟で忍び込むのは当たり前。

医療従事者の業務妨害となり得るような営業電話だってガンガン行う。

移動時間短縮のため、法定速度をオーバーするような運転だって辞さない。

医師と面会するためなら、我先にと言わんばかりの勢いで患者用の駐車スペースに車を停める。

全ては、MRとして高成績を叩き出すため。

だからこそ、過程や手段には拘らず、結果を最重視した行動を取る。

彼らの姿を見ていると、よくそこまで売上実績に注力した活動が出来るなぁと思わされます。

こういったMRの存在は、会社側からすればさぞかし頼もしいことでしょう。

そのせいか、MRとしての数字さえ良ければ、多少のグレー行為は会社から黙認されている節すらあります。

ヒサシ
ヒサシ

“無理が通れば道理が引っ込む”という一面があるんだよなぁ…

その一方で、社外の人間にとってはどうでしょうか?

MRとして高成績ということは、医師を含む医療従事者からも評価されていると言えそうです。

しかし、その他の部分はどうでしょうか?

MRとしてはともかく、社会人として誰の目にも立派な行為をしているでしょうか?

その答えに関して、必ずしも“Yes”とは言えないのかと。

少なくとも、スピード出しまくりの荒い運転や、患者をないがしろにするような行為はダメでしょう。

そのようなMRが倫理観に富んでいるかと言うと、やっぱりそんな事はないと思います。

良く言えば、常識や世間体に囚われないタイプ。

悪く言えば、倫理観を度外視して営業実績に拘るタイプ。

それは即ち、ある意味では“倫理観がぶっ飛んでいる”とも表現できそうです。

倫理観のネジが外れているから、世間一般には良くないとされる行動を選択できるのか。

営業実績だけを追求することに迷いが無いから、MRの活動を妨げる倫理的行為を排除しているのか。

真相はともかく、そんな人種が超優秀MRの中には一定数含まれている気がします。

最後に:MRに関わる『倫理観』とは玉虫色である

MRには、倫理的が必須である。

MRとして、倫理観が大切である。

そのように口に出して言うのは簡単なことです。

ですが、その倫理観とやらに溢れているMRが製薬会社の中で称賛されているかと言うと、別にそんなことは無いですよね。

社内で称賛されるMRとは、昔も今も“営業実績が優れているMR”と相場が決まっています。

難航先で自社製品を新規採用してもらった。

売上目標の達成率が支店でトップだった。

売上の対前年比が全国でトップだった。

このように実績面で素晴らしい結果を叩き出したからこそ、そのMRは社内で称賛されるワケです。

では、営業実績よりも倫理観を重視して活動したMRについてはどうでしょうか?

十中八九、上司から倫理より先に売上を何とかしろ!などと叱責されるのがオチではないでしょうか?


コンプライアンスを遵守するため、徹底してリスクを避けるスタイルで活動しました!
先方が忙しそうなので、彼らの邪魔はすまいと思って訪問活動を自粛しました!
担当施設には自社製品が適さない患者しかいないようなので、強引な処方依頼は行いませんでした!
最終的に売上目標は未達でしたが、自分は倫理観に沿って活動したためMRとして非難される筋合いはありません!

もしこんなことを堂々と言うようなMRがいたとしたら、ある意味、そのMRは倫理観に溢れていると言えるかもしれません。

しかしながら、上司からは100%間違いなく叱責されることでしょう。

つまり、製薬会社内のMRに関する『倫理観』なんて、その程度の扱いなんだと思います。

ヒサシ
ヒサシ

倫理観“だけ”が突出して優れていても、そのMRが社内で日の目を見ることは無いだろうな…

MRとして、倫理観が大切ではないとまでは言わない。

しかし、MRとしての営業実績に比べたら、倫理観の程度なんてのは大した問題ではない。

重大なコンプライアンス違反さえしなければ、とにかく売上(利益)を自社もたらしてくれるMRを優遇したい。

これが製薬会社としての本音なのかなと思います。

そう考えてみると、ますますMRの『倫理観』が何を指しているのか分からなくなってきました。(汗)

このMRの倫理観とは何か?というテーマに対して、理路整然と答えられるMRがどのくらいいるでしょうか?

少なくとも、私には即答できそうにないです。

どういった行動が倫理的で、どういった行動からが倫理的でないのか。

MRよって、いや、人によって解釈が異なるという時点で、倫理観なんてものは玉虫色の存在であるように思えてなりません。

取りあえず、MRとして倫理的か否かについては、良心の呵責があるかどうかで考えるくらいが丁度いいのかもしれませんね。

どうせ万人が納得し得るような答えなんて、この世には存在しないでしょうし。

MRとしての倫理観が何なのかはさて置き、MRとして後ろめたい気持ちにならないように、今後のMR活動を頑張っていこうと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

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