こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
皆さんは医薬品卸の配送職ってご存じですか?
簡単に言うと、病院・開業医・調剤薬局などに医薬品を届けることを仕事としている人々です。
私が医薬品卸にてMS(営業)として働いていた頃、配送職の人たちには何度もお世話になったものです。
さて、医薬品卸は物流を生業としている会社ですから、ある意味ではMS(営業)よりも重要なポジションの職種です。
そして、医療機関側にとっては毎日のように薬を届けてくれる人々なわけですから、MS(営業)以上に身近な存在でもあります。
意外と思うかも知れませんが、配送職の仕事振りが素晴らしいとの理由で、その医薬品卸に発注を増やす医療機関もあるくらいです。
一方で、配送職の不手際によって発注を減らす医療機関もあります。
そこで、今回は案外知られていない『医薬品卸の配送職』というテーマについて、MS時代の経験を踏まえて記事を書いてみました。
配送職の仕事内容・待遇・社内での立ち位置など、これから配送職への就職・転職を考えている人は参考にしてみてください。
配送職は縁の下の力持ち的な存在である!
突然ですが、皆さんは『医療機関側が医薬品卸に求めているもの』について考えたことがあるでしょうか?
これは業界内では永遠のテーマとも呼ばれておりまして、各医薬卸が日々そのテーマについて答えを模索しています。
さて、こういった問い掛けをすると殆どの人から、
医療機関からしたら、薬を安く売ってくれる業者を求めているんじゃないの?
…といった答えが返ってきます。
これはこれで1つの正解ではあるのですが、意外と『安さ』をそれほど重視しない医療機関もあります。
『安かろう、悪かろう』という言葉があるように、全ての医療機関が価格至上主義というワケではないのです。
こういった『安さ』以外には、答えの1つとして『定時配送』があります。
つまり、決まった場所、決まった時間に、確実に薬を届けることです。
皆さんだってクロネコヤマトや佐川急便に時間指定での配達を頼んで、その時間通りに荷物が届かなかったら嫌ですよね?
医療機関も同じで、『定時配送』をしてくれない医薬品卸は論外なのです。
この『定時配送』を実現するには、MS(営業職)ではなく配送職の努力が欠かせません。
決まったルートを正確に走り、荷降ろしや納品を素早く済ませ、次の取引先に向かう。
華やかさはありませんが、医薬品卸の根幹を支える仕事であることは間違いありません。
いわゆる『縁の下の力持ち』的な仕事ですね。
医療機関側が医薬品卸に『安さ』を求める場合、そのニーズに応えるのはMSの仕事です。
しかし、もし『定時配送』というニーズがあるのなら、それに応えるのは配送職の仕事です。
そんな配送職の仕事内容や待遇などについて、より詳しく解説します。
①仕事内容
この記事の冒頭で書いた通り、配送職はひたすら薬の配送を行います。
医薬品とは100錠1箱の小さな飲み薬から、1箱10kgの輸液まで様々です。
それらの医薬品を車に積み、運転して医療機関へと向かい、荷降ろしをして、病院・開業医・調剤薬局へと納品するのです。
そして、最後に相手方から伝票にハンコをもらうことで、その医療機関への配送は終了します。
医薬品を届ける順番についてはA病院の次はB薬局、その次はC病院へ…と言った具合に最初から走るルートは決められていることが多いです。
場合によっては配送職の裁量で多少のルート変更はできますが、あくまで『定時配送』が配送職の仕事ですから、大幅にルートから外れることは許されません。
ですから、良くも悪くも、毎日同じことを繰り返す仕事です。
また、重い段ボール入りの輸液を大量に運ぶこともあるので、体力勝負的な部分もあります。
私自身もMS時代に経験しましたが、輸液を何十箱も運ぶのは結構キツいですよ。
よく配送職の求人票に書いてあるような、
『薬を運ぶだけの軽作業です!』
『女性にも簡単なお仕事です!』
…という言葉は完全に嘘です。
もし配送職として働くなら、重い段ボール箱を運ぶくらいの気持ちでいた方が良いです。
ちなみに、運転が好き、または得意な人ほど配送職として長く勤めている印象があります。
②給料
ぶっちゃけた話、配送職の給料は安いです。
少なくとも、配送職の人から『給料面で満足している』という話を聞いたことはありません。
参考までに、私がMSとして勤めていた医薬品卸の配送職は、8時間労働で手取り14~16万前後だったそうです。
(※当時仲が良かった配送職の人から教えてもらいました。)
配送職は派遣社員、または契約社員という立場の方が多かったので、そのことが関係しているのかも知れません。
ただし、給料は地域によって結構違います。
私がMS時代に勤めていた地域は田舎だったせいか、配送職の時給も安かったです。
しかし、首都圏の方だと手取りで20万近くまで届く医薬品卸もあるみたいですね。
まとめると、給料を最優先で求める人は医薬品卸の配送職に向いていないと思います。
③休みやすさ
これは営業所の人員や方針によって大きく左右されます。
MS(営業職)が配送を手伝ってくれるような営業所なら比較的休みは取りやすいです。
しかし、MSが配送を手伝わない方針の営業所では、配送職が自由に休むことは難しいと思います。
それはなぜか?
配送職が休んだら、医療機関に薬を届ける人が誰もいないからです。
さて、そういった営業所のMSに限って、配送職が休むとブーブー文句を言います。
配送職の代わりに、仕方なくMSが配送に駆り出されるからです。
これは、私の先輩MSが実際に言っていたことです。
営業所によってはこんな気性の荒いMSもいますので、休む際には注意が必要です。
繰り返しになりますが、配送職の休みやすさは営業所次第なので、何とも言えない部分でもあります。
家庭重視の主婦(主夫)が配送職として働く場合は気を付けた方が良いでしょう。
④職場での人間関係
配送職は色々な人たちと関わりながら仕事をしています。
医療機関への配送(訪問)に関してはMSと、
医薬品卸の積込や梱包などについては倉庫係と、
時間指定の配送に関しては受注オペレーターと連携する必要があります。
ですから、配送職はただ配送すれば良いわけではなく、他部署とのコミュニケーションもある程度は必要です。
周りが人間的にまとも人ばかりなら問題ありませんが、私の経験上、医薬品卸は悪い意味で癖がある人間が多いように思えます。
先ほどの『休みやすさ』の項目で触れた気性が荒いMSが最たる例です。
配送職はそういった人間とも上手くやっていく必要があります。
それ以外だと、倉庫係の人間にも要注意です。
医薬品卸の倉庫係にはMSから左遷されてきた人間が一定数います。
彼らは人間性が破綻していることが多々あるので、仕事上で付き合うのは大変だったりします。
医薬品卸の倉庫は『MSの墓場』である…という意見について検証してみた。
その他には、取引先に薬を納品する際、明るく元気に挨拶するなどの行為も必要です。
ですから、コミュニケーションが得意であるほど配送職として上手く立ち回ることができるでしょう。
⑤将来性
医薬品卸の配送職は安泰とまでは言えないものの、需要は確実にあります。
もし今後、配送職が消える日が来るとしたら、それは医薬品卸そのものが完全に消滅するときです。
現在ではMSの人数こそ右肩下がりですが、極端な話、医薬品卸はMSがいなくても成り立ちます。
医療機関が真に求めているのはMS(営業)ではなく、定時配送をしてくれる人間なのです。
つまり、将来性という意味ではMSの方がよっぽど危ういです。
一方で、医療機関に薬を物理的に届けるという関係上、配送を行う人間は必ず必要です。
医薬品卸各社が配送職を雇い続けるかどうかはさて置き、配送職という職業自体がすぐに絶滅するとは考えにくいです。
医薬品卸の配送職は華やかでもなければ、待遇が凄く良いわけでもありません。
しかし、誰かがやらなければ医療機関が困ってしまう類の仕事でもあります。
そういった意味では、社会から必要とされている職業でもあります。
まとめ:医薬品卸の配送職はまあまあ激務&薄給である
私がMSとして働いていたのは5年間だけですが、その5年間で配送職の方が何人も辞めていきました。
配送職の人が辞める主な理由は『給料』と『人間関係』の2つです。
給料が安いから辞める。
人間関係が辛いから辞める。
この辺りは別の職業と何ら変わりません。
一方で、仕事内容が理由で辞める人は少ない印象です。
元MSの私から見ると『配送職は力仕事が多くて大変だなぁ…』と思うのですが、配送職本人は『適度に体を動かすので健康的だ』くらいの感覚でいる人もいます。
ただ、配送職の人は皆、口を揃えて『長く続けるような仕事ではない』と言います。
医薬品卸の配送職は、間違いなく社会的意義のある仕事です。
しかし、待遇面を考えると、人生を懸けて打ち込むような仕事ではないということですね。
配送には力仕事も含まれるので、40代~50代の人が長く勤めるには体力的にキツいという事情もあります。
ですから、『期間限定で働きたい人』や『取りあえず食いつなぎたい人』にとっては、ある意味適職なのかも知れません。
以上、元MSとしての配送職に対する意見でした。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!