こんにちは、アラサーMRのヒサシです。
今この文章を読んでいる皆さんは、医師や薬剤師などの医療従事者にメールや手紙を送る際、どのような敬称を付けていますか?
一般的なビジネスマナー的には『○○様』などが主流です。
しかし、なぜか医薬品業界では『御侍史』という言葉遣いをする人が多いですよね。
特に、MRは医師・薬剤師などにメールを送る場面も多いですから、上記のような言葉遣いを多用している人も多いかと思います。
ご覧の通り、日常生活では全く使われないような言葉です。
…と言うか、普通に生活していたら100%使わないですよね。
私自身もMRになりたての頃、この業界にはこんな敬称があるのかと驚いたものです。
少なくとも、医薬品卸のMS時代に『御侍史』という言葉を使ったことは一度もなかったです!
私が新人MRだった頃は、先輩MRの仕事振りを真似するだけで精一杯でした。
そのため『御侍史』という敬称については、周りの先輩MRに流されるまま使っていたという過去があります。
しかし、MRとして2年目に入った辺りのタイミングで、『御侍史』という言葉そのものへの違和感が爆発したんですよね。(汗)
『御侍史』という呼び方は、本当に正しい言葉遣いなのか?
どのMRも、何となく使っているだけの言葉なのではないか?
そのように考えた末、すぐに辞書やGoogleにて『御侍史』という言葉を調査すること数日。
それ以降、私は『御侍史』という敬称を使わなくなりました。
結論から言うと、メールや手紙の文章中で医師・薬剤師の名前に『御侍史』という敬称を付け加えることはマナー違反ではありません。
その一方で、『御侍史』の語源や意味などを考えると、日本語的には不自然な言葉遣いでもありです。
そこで、この記事では『御侍史』という言葉遣いについて、現役MRとしての視点から振り返ってみようと思います。
『御侍史』という言葉の成り立ち
皆さんは『御侍史』という言葉を辞書で調べたことがあるでしょうか?
試しに私が学生時代に使っていた電子辞書で『御侍史』と検索したところ、検索にはヒットしませんでした。(汗)
しかし、『御侍史』という言葉は読んで字の通り、『御』と『侍史』という言葉から成り立っています。
そこで、次は『侍史』という言葉を検索したところ、今度はヒットしました。
さて、実は『侍史』には複数の意味があり、その内容をまとめると大体こんな感じです。
・古い時代、貴人に仕えていた書記を指す言葉である。・書記に取り次いでもらって(物などを)お渡しすることを意味する。
ちなみに『脇付』とは、書簡のあて名の脇(わき)などに書き添えて、敬意を表す言葉のことです。
こうやって辞書を引いてみると、なるほど確かに『侍史』という敬称自体は存在するようですね。
しかし、本来の語源を辿っていくと、やはり医師・薬剤師などの医療従事者本人への敬称としては不自然であるように思えます。
なぜかと言うと、『侍史』そのものは貴人(偉い人)ではなく、その書記(付き人)を指す言葉だからです。
この『付き人』とは、現代で言うところの『秘書』に該当する存在です!
病院などには医局秘書や教授秘書といった人たちがいますが、まさにそのような役職者が該当します。
さらに、『御侍史』の『御』とは、『侍史』を敬う意味合いの言葉です。
そのため、これは正確には『秘書さんへの敬称』であることが分かります。
つまり、『御侍史』という敬称そのものは確かに存在している言葉であり、決して間違ってはいない表現なのですが…
より正しい使い方をするならば、医師・薬剤師本人にではなく、彼ら周りで働いている秘書宛に使うのが適切ということになります。
例えばですが、医師であるA先生がいたとします。
さらに、そのA先生を補佐する秘書であるBさんがいたといます。
このような状況で、もしメールの宛名部分に『A先生 御侍史』と記載した場合、本来の意味に照らし合わせると『A先生の侍史(秘書)であるBさんに対して宛てたメール』という扱いになります。
よって、このような宛名のメールはA先生本人ではなく、秘書であるBさんのもとに届かないと、日本語としては不自然ということになりますね。
しかしながら、こういった場合だとA先生宛のメールとして送信されているのが実情です。
言葉の用途を考えると、明らかに変であるにも関わらず…です。
そもそも『先生』という呼び方そのものが、実は敬称であることを忘れてはいけません。
その点を踏まえて考えてみると、宛名の箇所に『○○先生 御侍史』と書いている時点で、実は敬称を二重に使っていることになります。
二重敬称という意味で言えば、例えるなら『○○先生 様』と書いているようなものです。
これって、どこからどう見ても変ですよね?
以上のことから、やっぱり『○○先生 御侍史』という表現は、日本語として不自然であることが分かります。
こんなことを気にしている医療従事者が実際にいるのかどうか、ぶっちゃけ怪しいところではありますけどね…(汗)
余談ですが、実は新人MRだった頃に上司から『御侍史』の意味合いを教えられたことがありました。
しかし、当時の私は上司から受けた指導の意味について、深く考えることはしませんでした。
それどころか、医療従事者であれば誰彼構わずに『御侍史』という敬称を使いまくっていました。
当時のことを思い返してみると、言葉の正しい意味を知ることはマジで大切だと思うばかりです。(汗)
『御侍史』と言葉を使っているのは医薬品業界だけ!?
新人MRにおすすめ!『新人MRマニュアル』の内容についてシェアします!
実はですね、この本の121P~122Pに『御侍史』の語源や使い方などについて色々と書かれています。
せっかくの機会ですので、その内容について抜粋してみました。
『侍史(じし)』とは医療業界でしか使われていないようです。
(中略)
『侍史』は脇付または右筆といわれるもので、非常に位が高い人に書簡を差し上げる際、直接渡すことを避けて『お付きの人』に宛てる場合に使われていました。
したがって、本来は『侍史(お付きの人)』に『御』をつけて『御侍史(おんじし)』とするのは誤りです。
ただし、日常化されることで常識は変化するものです。
(中略)
『御侍史』と書いても必ずしも間違いではないところです。
引用:新人MRマニュアル
いかがでしょうか?
以前からずっと思っていましたが、やはり『御侍史』という言葉はこの業界独特の言葉遣いみたいですね。
むしろ、他の業界で『御侍史』という言葉が使われているなんて話は、少なくとも私は聞いたことがありません。
他業界で働いている友人知人に尋ねてみたところ、そもそも“御侍史”という言葉自体を知らない人ばかりでした!
さてさて、先ほどの抜粋した文章を読んでいただければ分かる通り、『御侍史』という言葉の使い方は、時代と共に変化してきたことが窺えます。
…が、本来の語源を考えれば、やはり違和感は残ります。
実際、この新人MRマニュアルの著者的には、御侍史という言葉について『敬称として間違いではないが、実際に使うのは推奨できない』みたいなニュアンスのことを主張していますからね。
決してNGではない。
しかし、OKとも言い難い。
詰まるところ、そういう話です。
うーむ、何ともグレーな言い回しですね…(汗)
結論として、『御侍史』という言葉を使いたければ使えば良いし、使いたくなければ使わなくても良い。
要するに、どちらでも良いということです。
この辺りはMR個々人の考え方次第ですね。
ぶっちゃけた話、もはや好みの領域なのかなと。
…とはいえ、『御侍史』という言葉の本来の意味を知っている教養深い医療従事者がいた場合、もしかしたら反感を買うような可能性も否めません。
そのため、私自身は『御侍史』という敬称はなるべく使わないようにしています。
『御机下』という言葉遣いにも注意せよ!
今この記事を読んでいる皆さんは『御机下』という言葉をご存知ですか?
知名度という意味では、先述した『御侍史』には及ばないものの、これもまた医薬品業界にて使われている敬称の1つです。
この単語もまた、読んで字の如くですが『御』+『机下』という言葉から成り立っています。
そんな『御机下』ですが、一体どういった意味があるのでしょうか?
…というワケで、辞書を引いて色々と調べてみました。
・これを意訳すると『机の上に置くような大切な書状ではありませんから、机の下にでもそっと置いて下さい』という意味合いになる。
・『御机下』を使うべき対象者は“年下の人間”あるいは“目下の人間”である。
(※特に、秘書がいないような役職の人物が該当する。)
いかがでしょうか?
以上の内容を踏まえると、MRの立場で医療従事者を相手に『御机下』という言葉を使うのはNGです。
…と言うか、非常に危険です!!
なぜならば、この敬称を使うという事は『貴方は自分(MR)よりも目下の人間である』と言っているのも同然だからです。
この意味を知らずにMRが『御机下』なんて言葉遣いをしたら、相手が烈火の如く怒る可能性アリです。
『御机下』の意味を鑑みると、自ら地雷を踏みに行くようなものです!
その一方で、医療従事者の側がMRに対して『御机下』という言葉を使うのはOKです。
多くの医療従事者(特に医師)にとって、MRは“目下の人間”という認識でしょうからね。
(※それはそれで、MRの立場では少しばかり心の中がモヤモヤしますけど。)
実際、医師が筆者(MR)に宛てて送ってくるメールの中で、『御机下』という言葉を使う人も僅かですが存在していますので。
結論として、MRの立場で『御机下』という敬称を使うのはお勧めできません。
何となく『御机下』という敬称を使っているMRは、この機会に言葉遣いを改めましょう。
いや、むしろ今すぐに改めて下さい。
そうしないと、いつか大きな火傷を負うことになります。
今更言うまでもないことですが、医療従事者(特に医師)は教養深い人々です。
つまり、ここで紹介した『御机下』の正しい意味を知っている可能性は高いと言えます。
もしどうしても畏まった敬称を使いたいのなら、『御机下』よりも『御侍史』の方がまだマシです。
相手の不興を買わないためにも、敬称は正しく使うのが吉です。
MRとして信用を得るのは大変だけど、信用を失うのは一瞬ですからね!
まとめ:『御侍史』という言葉遣いはダメではないが、乱用は控えた方が良いかも?
どんな業界にも独特な言葉遣いや言い回しが存在すると思います。
そういった意味では、医薬品業界にて該当する代表例が『御侍史』なのかもしれませんね。
私自身を含めて、今までのMR生活で『御侍史』という言葉を使ってきた人は多いことでしょう。
業界内では当たり前のように使われている『御侍史』という言葉。
ですが、よくよく調べてみると、単なる敬称ではないことが分かります。
…と言うか、本来の意味からはかけ離れているときた。
とはいえ、この『御侍史』という言葉遣いによって、相手から怒られたという人は殆どいないのではないでしょうか?
業界内の医療従事者が『御侍史』という敬称についてどう思っているかは不明ですが、大半の人は特に気にしていないかと思いますしね。
ただ、もしかしたら…
本当に、もしかしたらですが…
『御侍史』という敬称や使い方について、不満を持っている医療従事者がいないとも限りません。
その可能性が1%なのか2%なのかはともかく、私個人としてはその1%や2%が怖かったりもします。
必要以上に丁寧な言葉遣いも考えものですからね。
…というワケで、私は今後も医療従事者にメールや手紙を送る際には、普通に『○○先生』や『××様』という宛名を記載するスタイルで働いていこうと思います。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
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「○○先生 御侍史」は二重の敬称ではありませんし、
「そもそも宛名本人ではなく秘書に宛てたものなので
不適切である」というわけでもありません。
また、「机下」は目上の方に使える脇付けかと存じます。
匿名さん
コメントありがとうございます!
私が勉強して得た知識とは異なる見解をお持ちのようですね…
「侍史」や「机下」の意味・成り立ちについて、改めて調べてみます!