台風19号による医薬品卸の災害対応について元MSが考察してみた

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

台風19号が各地に爪痕を残していきましたが、

そんな中で医薬品卸が存在感を発揮しています。

RISFAXでも報じられましたが、

医薬品卸各社が被災した取引先に対して復旧支援をしていることをご存知でしょうか?

具体的には、アルフレッサ・スズケン・メディセオといった大手医薬品卸の社員が取引先に赴き、泥かき洗浄作業を手伝っているのです。

報道されている通り、これは社会的にも立派な行為だと思います。

その一方で、元MSとしては少しばかり違和感があります。

美談のように報じられているけど、果たして美談と呼べるほどの話だろうか?

正直に言うと、

『取引先に恩を売ろうとしているのでは?』

『この機会に取引拡大を狙っているのでは?』

…などと邪推している自分がいます。

私の今までの経験上、医薬品卸の人間が無償で復旧作業を手伝うということが腑に落ちないのです。

その辺りの事情について、MS時代の経験を踏まえて書いてみました。




復旧支援の真意とは?


とりあえず、報じられた事実について見ていきましょう。

RISFAXの報道内容をまとめると大体こんな感じです。


・アルフレッサとスズケンの社員ら10人以上が長野市の調剤薬局にて泥かき・洗浄作業を行った

・メディセオはMSと配送担当者を動員し、約20施設の取引先にて洗浄作業を手伝う

・メディセオは飲料水やタオルといった備品の配給も行っている


なるほど、確かに立派な行動だと思います。

医薬品卸各社の思惑はどうであれ、被災した取引先からしたらありがたいに決まっています。

私が取引先の人間だったら、復旧支援に来てくれた医薬品卸の人に対して間違いなく感謝するでしょう。

ただ、これは本当に個人的な考えなのですが、

医薬品卸側が狙っているのはまさにその点なのでは?

…とも思うのです。

人間とは恩を受けた後、何らかの形で恩を返したいと思うものです。

その心理を上手く突ける者ほど、ビジネスで成功する可能性が高まります。

恩を売って、将来の利益に繋げる

ビジネスの基本ではありますが、今回の復旧支援の根底にはそんな思惑があるでは?

穿った見方ですが、私はそのように見てしまいます。

医薬品卸による復旧支援は義理か?義務か?


今回の報道でアルフレッサ・スズケン・メディセオの3社に共通している点があります。

それは組織的な行動だということです。

RISFAXの内容を読む限り、

社員の中で有志を募り、業務時間外にボランティアとして復旧支援をしている!

…といった感じではありません。

どちらかと言うと、上司(会社)からの指示によって統制されている印象を受けました。

つまり、会社ぐるみで取引先の復旧支援を行っている。

現場の人間は実行部隊として取引先に赴き、泥かきや洗浄作業をしている。

医薬品卸の社員は業務の一環として義務を果たしているだけ。

どうしてもそのように思えてしまうのです。

もちろん、理由はどうであれ、医薬品卸各社は取引先に貢献しようとしているのは事実です。

そのこと自体は立派だと思いますし、何も疚しいことなんて無いと思います。

とはいえ、やっぱり違和感は拭えません。

何と言うか、義理という要素が欠けている。

その割に、なぜか美談のような報じられ方をしている。

そんな感じがするのです。

例えばですが、

義理人情溢れる医薬品卸の社員が個人として立ち上がり、

自分本来の仕事を投げ出してまで取引先に駆け付け、

お世話になっている人たちのために無償で復旧支援を手伝い、

その結果として取引先から感謝される!

…みたいな内容だったら間違いなく美談だと思います。

しかし、繰り返しになりますが、

今回の各医薬品卸の行動には組織的な要素がチラホラ見えます。

つまり、今回の復旧支援では義理ではなく義務の要素が強いのです。

そのせいで、私にとっては美談に思えないのかも知れません。

災害時の備品配給は公競規の対象外!?


RISFAXによると、メディセオは飲料水やタオルなどの備品を取引先に配給しています。

これって公競規的にアウトでは?

…と最初は思いましたが、特例として災害時はセーフみたいです。

医療用医薬品卸売業公正取引協議会(卸公取協)によると、

公正競争規約で規制する景品類の提供に関して、災害時は例外として容認しているそうです。

これも卸公取協日くですが、

『緊急災害時で必要かつ相当と認められる場合等は、それが医療機関等に対する景品類の提供に該当しうる行為であっても、制限の対象とはならない。』

…とのことです。

MSもMRもノベルティ配布が難しくなったこのご時世、

災害時限定とはいえ、ノベルティですらない備品を取引先に配れる手段があったとは知りませんでした。

個人的には、 こういった備品配給も他の医薬品卸との差別化戦略の1つであるように思えます。

このブログ内で何度も述べてきた通り、医薬品卸とは同業他社との差別化が難しい業種です。

そのため、彼らは常に差別化の手段を模索しています。

その一環として、有事か平時かを問わず、常に他社との差別化を図る。

だからこそ、医薬品卸は災害時においても競争する。

よって、医薬品卸にとっては災害時の対応で他社に差を付けようとするのも戦略の1つなのです。

製薬会社は復旧支援に参加しないのか?


各医薬品卸が被災地で復旧支援をしている傍ら、各製薬会社の社員は何らかのアクションを起こしているのでしょうか?

一部の製薬会社は義援金といった形で復旧支援をしているようです。

しかし、RISFAXや日刊薬業などを見る限りでは、製薬会社の社員自身が泥かき・洗浄作業などをしている様子は無さそうです。

もちろん、単に私が知らないだけという可能性もあります。

ですが、少なくとも医薬品卸のように会社ぐるみで組織的な復旧支援をしているようには見えません。

でも、製薬会社のように静観する姿勢もまた正しいと思います。

MRといった製薬会社の社員にも都合があります。

彼らが復旧支援に率先して参加することを望んでいるとは限りません。

誰しも、社会人であれば自分本来の仕事があるからです。

そう考えると、取引先の復旧支援に力を入れる医薬品卸の方が異端であるとの見方もできます。

自分がMRあり、なおかつ各製薬会社による復旧支援の話が聞こえてこないからこそ、

余計に各医薬品卸が『復旧支援』という土俵上で競い合っているように見えるのかも知れません。

まとめ:医薬品卸の復旧支援には色々な思惑がある


自分で言うのも妙ですが、この記事の内容は相当ひねくれていると思います。

医薬品卸は善意で取引先を助けようとしているだけだろ!?

だったらそれで良いじゃねーか!

いちいちケチ付るんじゃねーよ!

…というような声が聞こえてきそうです。

ただ、自分でもひねくれた記事を書いてしまったと思う反面、

各医薬品卸の思惑に関してはそれなりに的を射た考察なのではと思っています。

医薬品卸の取引先に対する入れ込み方と言うか、

顧客を繋ぎとめようとする執念には凄まじいものがあります。

この辺りはMS経験がある人でないと中々理解してもらえないと思います。

自社は復旧支援を怠っている間に、他社主導で復旧支援が行われていく。

その結果、取引先が他社に恩を感じ、他社から医薬品を買うようになる。

そして、自社の売上は減り、自分もMSとしてのメンツが潰れてしまう。

こうなってしまうことをMSは何よりも怖れます。

差別化が難しい職種・業種だからこそ、MS及び医薬品卸は同業他社の行動に敏感なのです。

手をこまねいていると、他社に注文が流れてしまう。

そしてそれは、災害時においても同じである。

この辺りの事情が、医薬品卸による『他社に先んじて復旧支援を行う』という行動に繋がっているのではないでしょうか。

以上、元MSの勝手な考察でした。





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