新型コロナワクチンの流通は医薬品卸が担うのか?課題は温度管理への対応か!?

医薬品卸の今後

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

 

この記事を書いているのは2020年の11月23日ですが、米国では新型コロナワクチンを接種可能にするべく色々な申請手続きが始まっていますね。

 

米国のファイザー社とモデルナ社がそれぞれワクチンを開発し、両社とも有効性が90%超と発表しています。

 

日本のニュースでも話題になっていますので、ご存知の人も多いかと思います。

 

何を以って有効性が90%超としているかは私も勉強中ですが、単純に90%超という数字だけを鵜吞みにするのは危なそうです。

 

この辺りはワクチンに限らず臨床試験あるあるというか、試験デザインや患者背景などをしっかりと読み解いていかなければダメな部分かと思います。

 

また、日本国内の専門家は有効性だけでなく安全性も注視すべきだとの見方が強く、個人的には私も同意見です。

 

とはいえ、新型コロナに対抗するための決定打が乏しかった今までの状況を考えると、やはりワクチン開発⇒有効性確認⇒一般人への接種準備という流れは全人類にとって朗報ですね。

 

このワクチンが全人類を救う一手になるのであれば、当然ながら日本でもワクチン接種が始まることでしょう。

 

日本政府としては2021年の前半部分にワクチン接種を可能にしたい旨を公表しているので、早ければあと半年くらいで接種できるようになるかも知れません。

 

さて、普通のワクチンであれば製薬会社から医薬品卸を介して医療機関に流通するのが一般的です。

 

患者(一般人)にとって、ワクチンは病院などの医療機関にて接種するものですから、この流通順序は当然の経路です。

 

ですが、何と言っても今回のコロナ禍は国難とも呼ぶべき状況です。

 

日本での新型コロナワクチン接種については国が接種費用を全額負担し、さらに健康被害が出た場合の損害賠償は国が肩代わりする方向で話を進めています。

 

ご覧のように、今回のワクチン接種には国が大きく関わっています。

 

果たして、従来通り医薬品卸を経由しての流通体制となるのか?

 

それとも、国が主導でワクチンを一元管理するような体制になるのか?

 

その辺りの事情について考えてみようと思います。

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ファイザーとモデルナのワクチン特徴


実際には日本国内にて接種体制作りが進んでいる新型コロナワクチンは結構あります。

 

ファイザ社ーとモデルナ社だけでなく、有名どころでは外資系だとアストラゼネカ社、ジョンソン&ジョンソン社、ノババックス社などです。

 

また、内資系だと第一三共や塩野義などですね。

 

第17回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 新型コロナワクチン実用化に向けた取り組みについて 

 

これらの中で有効性90%超という触れ込みで世間を賑わしているのがファイザーとモデルナのワクチンです。

 

そこで、色々なサイトや記事などを見て、上記2社のワクチン特徴についてまとめてみました。

 

なお、有効性や安全性についての情報は諸説あるので、この場では省略しています。

 

企業名 ファイザー社 モデルナ社
ワクチン種類 mRNAワクチン mRNAワクチン
接種回数 2回 2回
接種スケジュール 0日、21日 0日、28日
接種方法 筋肉注射 筋肉注射
保管方法 -70℃(最大で半年)

2~8℃(5日間)

-20℃(最大で半年)

2~8℃(30日間)

日本での状況 ワクチン開発に成功した場合、日本に2021年6月末までに1.2億回(6000万人分)を供給する基本合意している。 武田薬品工業株式会社による国内での流通のもと、来年上半期に4000万回分(2000万人分)、来年第3四半期1000万回分(500万人分)の供給を受けることについて契約を締結している。

 

こうして見比べてみると、保管方法以外は共通点が多いですね。

 

その一方で、ファイザーのワクチンは-70℃での保管が必要であり、しかもその状態ですら半年しか保存が利きません。

 

モデルナ社の-20℃のワクチンも中々ハードルが高いですが、ファイザーのワクチンはさらにその上を行っています。

 

なお、ファイザーとしては今回の新型コロナワクチンを米国から日本への空輸する方針みたいですが、日本に着荷した後の流通体制については現在協議中だそうです。

 

日本国内でファイザーの新型コロナワクチンを供給するにあたって、この温度管理がネックになりそうですね。

 

では、もし医薬品卸が-70℃のワクチンを流通させるとなると、どんな事態が予想されるでしょうか?

 

この場合、厳格な温度管理が求められるスペシャリティ医薬品を扱っている経験が豊富な医薬品卸ほど有利でしょう。

 

超低温での輸送システム(装置)を持っていたり、あるいはそれらを使いこなすノウハウがあれば、間違いなくアドバンテージとなります。

 

ですが、今回の新型コロナワクチンは何と言っても本数が膨大です。

 

ハッキリ言って、スペシャリティ医薬品の流通量とは比べ物になりません。

 

それどころか、毎年のインフルエンザワクチンの量ですら比較になりません。

 

厚労省が公表している通り、ファイザーのワクチンを6000万人分も日本国内にて流通させるとしたら、それはもう膨大な本数です。

 

6000万人と言ったら、日本の全人口の約半分です。

 

そう考えると、これがいかに途方もない数字かご理解いただけると思います。

 

しかも、ファイザーの新型コロナワクチンは1回目の接種後、次回は21日後に2回目の接種を受ける必要があります。

 

つまり、1回目と2回目の接種間隔が短いワケです。

 

この前提で考えると、医薬品卸としては短期間のうちに新型コロナワクチンの出庫・入庫・納品などをひたすら繰り返すことになります。

 

こういった条件のもと、医療機関へと滞りなくワクチン供給できる医薬品卸がどのくらいいるでしょうか?

 

少なくとも、4大卸レベルの物流機能がなければ、医療機関への供給どころか十分量のワクチンを自社倉庫で保管することすらも難しそうです。

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-70℃保管は医療機関側にとっても頭が痛い問題


早速と言うべきか、米国ではファイザーの新型コロナワクチンについて、

 

-70℃で保管可能な設備がない施設にワクチン供給するべきか?

 

小規模な医療施設へのワクチン供給は諦めるべきか?

 

…といった議論が持ち上がっています。

 

新型コロナ患者の統計人数を発表しているジョンズ・ホプキンス大学のアメシュ・アダルジャ氏という方は、ファイザーのワクチンについて以下のように述べています。


このワクチンの供給面における最大の課題の1つが低温の維持だ。
大都市の病院でさえ超低温でワクチンを保管する設備を備えておらず、あらゆる面で厄介だ。

 

やはり、米国でも-70℃のワクチンをどのように供給・保管・接種するかということについて課題となっているようですね。

 

いずれ日本国内でも同様の議論が過熱しそうです。(汗)

 

ちなみに、米国カリフォルニア州では超低温冷蔵設備を持たない施設にはワクチンを供給しない方針だそうです。

 

その代替案として、ワクチンが届きにくい地域のために、移動式の予防接種クリニックを含む超低温供給網を構築することを提案みたいです。

 

なるほど、移動式のクリニックか!

 

その手があったか!

 

…と最初は思いましたが、この案を実現まで漕ぎ着けることもまた大変です。

 

もし仮に移動式クリニックを作るとして、何軒くらい作るのか?

 

どの地域を、どのくらいの時間をかけて巡るのか?

 

クリニック内に貯蔵しておけるワクチンは何本までなのか?

 

接種にあたって医師や看護師などの人材をどこから引っ張ってくるのか?

 

これら全てを実現するだけのカネはどうやって捻出するのか?

 

私のような素人が考え付くだけでも色々な課題があります。

 

もし日本国内で移動式クリニックを立ち上げるということになったら、それはそれで議論が沸騰しそうですね。

医薬品卸にとってはワクチン受注が収益向上の一手となる!?


国内外を問わずに新型コロナが蔓延しているこの状況では不謹慎な物言いですが、医薬品卸にとっては、今回の新型コロナワクチンの案件を何としても受注したいはずです。

 

その理由とは、会社としての収益向上のためです。

 

先ほどから述べてきた通り、新型コロナワクチンの温度管理などを含めて、流通時の課題は山積みです。

 

しかし、いざ医薬品卸を経由して各地の医療機関にワクチン供給されるとしたらどうなるでしょうか?

 

医薬品卸にとっては莫大な利益となります。

 

厚労省が公表している通り、ファイザーのワクチンについて1億2000回分(6000万人分)を市場に流通させると仮定します。

 

そしてさらに、仮にですがワクチン1本当たりの粗利を100円とします。

 

100(円)】×【1億2000万(本)】=【102億(円)

 

粗利とはいえ、102億円ですよ?

 

これはとてつもない金額です。

 

この粗利から様々な販管費を差し引いたとしても、相当な営業利益額が残るのではないでしょうか?

 

昨今の経営不振で苦しんでいる医薬品卸からしたら、喉から手が出るほど欲しい案件であること間違いなしです。

 

【2020年上半期】コロナ禍における4大卸の収益力について分析してみる!

大手医薬品卸4社の営業利益率がヤバい!コロナ禍・仕切価上昇・価格競争の影響が深刻すぎる!

 

 

これでもし、どこかの医薬品卸が1社流通という条件でファイザーからワクチン受注したらどうなるでしょうか?

 

それだけで、その医薬品卸の経営が立ち直る起死回生の一手になりそうです。

 

そもそも国が新型コロナワクチンを一元管理する可能性も否めませんが、もし医薬品卸の出番が回ってきたとき、この超重要案件を実行に移せるのはどの医薬品卸になるのでしょうか?

 

続報が気になるところです。

モデルナ社のワクチン流通については武田薬品が鍵を握る?


厚労省が公表している資料を読む限り、モデルナ社のワクチン流通については武田薬品が関わっています。

 

武田薬品工業株式会社による国内での流通のもと来年上半期に4000万回分(2000万人分)、来年第3四半期に1000万回分(500万人分)の供給を受けることについて契約を締結している。AMED(R2年度二次公募)で武田薬品工業を採択。(※厚労省の資料から一部抜粋)

 

こういった状況だと、武田薬品のMRが医師や薬剤師などに対してワクチンの説明会などを行ったりする流れになるのでしょうか?

 

もし仮にそうだとしたら、医薬品卸(MS)の武田薬品側に仕事に関与することになりそうです。

 

さて、おさらいですが4大卸の中で武田薬品系列の製品を扱えるのはアルフレッサとメディセオだけです。

 

この時点で、スズケンと東邦の2社はモデルナ社のワクチン供給についてハンデを背負っています。

 

少なくとも、今までの医薬品業界の流れを考えると、武田薬品がスズケン・東邦に自社からの製品を卸すなんてことは考えにくいです。

 

…とは言っても、新型コロナの感染防止は国が総力を挙げて取り組むべき案件です。

 

武田薬品がモデルナ社のワクチン流通についてどのように考えているかは未知数ですが、今の日本国内の状況を考えると、製薬会社と医薬品卸のメンツやプライドに拘っている場合ではないことも事実です。


この国難を乗り切るため、今回に限り流通体制を変更します!
アルフレッサとメディセオだけでなく、スズケン・東邦にもモデルナ社のワクチンを出荷します!
仕切価やリベートについて、全ての医薬品卸に対して同等の扱いとします!

 

こんな展開になる可能性もゼロではないのかなぁと思ったりしています。

 

一方で、やはりスズケン・東邦は武田薬品が絡んでいる時点で蚊帳の外に置かれるのだろうか…という可能性も否めないです。

 

そうなると、これまた極端な予想ですが、アルフレッサ・メディセオはモデルナ社(&武田薬品)のワクチンを中心に扱い、スズケン・東邦はファイザーのワクチンに特化したビジネスを行うのでしょうか。

 

この辺りについては、製薬会社と医薬品卸の関係性が問われる部分ですかね。

 

製薬会社も医薬品卸も慈善団体ではなく営利団体ですから、間違いなく売上や利益といった要素を巡って色々な議論が沸き起こりそうです。

最後に:新型コロナワクチン流通を任される医薬品卸はどこだ!?


ここまで私の予想や主観混じりの意見ばかりを書いてきましたが、元MSとしては医薬品卸に新型コロナワクチン流通を頑張って欲しいという気持ちがあります。

 

医薬品卸の社会的使命とは、医薬品やワクチンなどの医療物資を安定供給することです。

 

安定供給とは単純に何かを運ぶだけでなく、ユーザーが求めているものを安全かつ確実に届けることですからね。

 

この新型コロナワクチンがいよいよ日本国内で摂取できるようになった際、医薬品卸は安定供給の使命を全うできるかどうか、個人的にはとても気になっています。

 

まずは国としての方針が固まらないことには医薬品卸としても身動きしにくい状況かとは思います。

 

ですが、いざ医薬品卸の出番が回ってきたときに何も準備していなければ、今回のワクチン流通には対応しきれないでしょう。

 

よって、今現在も私が知らないところで、医薬品卸の幹部クラスがファイザーあるいは武田薬品(モデルナ社)に接触していることと思います。

 

自社であれば、新型コロナワクチンを供給できる体制が整っている。

 

あるいは、ワクチン供給のための体制作りを急速に進めている。

 

医薬品卸側としてはこんな感じでアプローチを掛けているのではないでしょうか?

 

実際に新型コロナワクチンの流通について受注できるかどうかは別として、こういった準備活動をして種を蒔いていかなければ芽が出ることもありません。

 

これでもし医薬品卸がワクチン供給を任されたとなれば、各メディアを通じて世間から注目される可能性もあります。

 

そうなれば、2019年11月の談合問題にて失った社会的信用を取り戻す契機にもなるかも知れません。

 

色々な意味で、医薬品卸にとって今回の新型コロナワクチン案件は重要であると思うワケです。

 

新型コロナワクチンだけでなく、今後の医薬品卸の動向にも注目していこうと思います。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!



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