製薬会社の都合による自主回収によって医薬品卸のMSは苦しんでいる!

MSの仕事

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

 

日医工の自主回収によって医薬品卸のMSが現物回収に奔走しているみたいですね。

 

日医工 12成分15品目「承認規格等に適合せず」自主回収 原因について社内調査中

 

業界内で自主回収は珍しいことではありませんが、今回は15品目という数です。

 

ただでさえコロナウイルスが蔓延している状況ですから、現場のMSからしたらメチャクチャ厄介な案件でしょう。

 

いや、コロナの件を差し引いても厄介であることに変わりはない。

 

私自身もMS時代に行った自主回収の仕事には良い思い出がありません。

 

製薬会社から『○○錠や△△注を自主回収します』というアナウンスが流れる度に憂鬱な気分になりました。

 

この自主回収という仕事は、平たく言えば『返品処理』と同じ流れで行います。

 

医薬品卸のMSが返品を嫌うのはなぜ?それは再販するのが大変だからです!

 

返品の仕事が好きなMSなんて全国どこを探しても皆無でしょう。

 

返品の仕事なんて本当はやりたくない。

 

面倒だし、1円の利益にもならないし、勘弁してほしい。

 

でも、会社の指示で仕方なくやらなきゃいけない。

 

だから、自主回収の通達が出ると憂鬱になる。

 

こんな風に思っているMSは多いのではないでしょうか?

 

そこで、本日はMRとMSの両方の目線から自主回収の業務について書いてみました。

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MSが行う自主回収時の業務フロー


医薬品の自主回収とは、多くの場合MRではなくMSが医療機関に赴いて現物を回収します。

 

医薬品業界以外の人から見たらちょっと意外かも知れませんね。

 

現物の回収とは、読んで字の通りMSが医療機関に言って回収対象の薬を持って帰るだけです。

 

何だ、簡単な仕事じゃん!

 

…と言いたいところですが、MSにとっては案外そうでもありません。

 

実際に現物を回収するまでには相応の準備が必要ですし、回収後も伝票上の処理を行わなければなりません。

 

では、MSは自主回収の際にどのようなことをしているのか?

 

医薬品卸によって多少の差はあるかも知れませんが、大体こんな流れで行動するのではないでしょうか?


①自主回収するべき医薬品が、いつ・どこに・どのくらい納品されていたかを調べる
②その納品歴から自主回収に該当する使用期限・ロットかどうかを調べる
③該当するものがあったら医療機関に連絡して回収に伺う旨を伝える
④医療機関にて現物を回収する
⑤帰社したら伝票上の返品処理を行う
⑥返品伝票が出来たら改めて医療機関に行く
⑦返品伝票の内容を確認してもらい、押印してもらう
⑧帰社したら押印済みの伝票を社内で処理する

私自身の経験に基づいて業務フローを書いてみましたが、いかがでしょうか?

 

結構面倒な手順だと思いませんか?

 

①~⑧まで、1つ1つの仕事は確かに簡単です。

 

問題なのは、これらの行程を普段の業務と並行して進めないといけない点です。

 

MSとして、自主回収を理由にして普段の営業活動を疎かにすることは許されません。

 

要は限られた時間の中で①~⑧までの仕事を行う必要があるのです。

 

例えば①と②であれば、ルーチンで行っている内勤の時間が減ることを意味しています。

 

③にしても医療機関に1軒ずつ電話・メールを行うのは地味に時間を食います。

 

そして、特に厄介なのが④です。

 

自主回収品は開封されている薬剤も回収対象になります。

 

外箱が既に無いような薬剤も回収しなければなりませんから、それらを物理的に運ぶMSはやはり気を遣います。

 

もし外箱が健在だとしても、普段の返品業務と同じく他卸が納品したモノと取り違えないように注意しなければなりません。

 

⑤~⑧にしても、先述した通り自主回収は返品の一種ですから、伝票上で卸⇒取引先への返金が発生するワケです。

 

つまり、MSにとっては1円の利益にもならない仕事です。

 

そして、そんな憂鬱な仕事をこなしている最中だろうと、急配などのイレギュラー業務が容赦なくMSを襲ってきます。

 

まさにWパンチ、Wコンボです。

 

MSにとって気力&体力を消耗すること間違いなしです。

 

だからこそ、自主回収はMSから忌み嫌われるのです。

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自主回収の〆切後に起こる悲劇


原則、製薬会社は卸に対して自主回収の期限を設けています。

 

医療機関から回収した現物は○○月○○日までに弊社まで送品してください!

 

…といった感じですね。

 

MSにとっては、この〆切日というのが厄介なのです。

 

例えば、4月30日が自主回収の送品〆切日だったA錠という薬があるとします。

 

そんなA錠について、5月1日になってからある施設にてA錠が出てきた…なんてこともあります。

 

製薬会社から自主回収の通達が出た時点で、医療機関側はMSなりMRなりから回収の件について連絡が入ります。

 

でも、ズボラな在庫管理をしているような医療機関側は適当なことを平気で言います。


ああ、自主回収の連絡が来たA錠?
A錠なら、もう患者さんに処方したから在庫無いよ?
だからウチに関しては気にしなくて良いよ。

こんなことを言っておいて、自主回収の〆切日が過ぎてから血相を変えて連絡してきたりします。

そして、理不尽な要求をしてきます。


申し訳ないけど、この前の自主回収対象になったA錠が棚の奥に残っていたんだ。
無理を言って悪いけど、このA錠を持って帰ってくれるかな?
製薬会社が設けた自主回収の〆切日を過ぎてる?そこを何とかしてよ。
回収してくれないとウチが困るんだよ?このA錠をどうしろって言うの?持て余すだけなんだよ?患者に使えって?出来るわけないでしょ?
もし回収してもらえないなら、お宅に出している薬の発注を他の医薬品卸にお願いしようかな?
何とかしてくれるよね?期待してるよ。

 

いかがでしょうか?

 

ちなみに、これはMS時代に担当していた調剤薬局における私自身の実体験です。

 

一字一句この通りではありませんが、大体こんな感じのことを言われました。

 

しかも、このような経験は一度や二度ではありません。

 

取引中止をチラつかせて無茶振りしてくるなんて、酷いとは思いませんか?

 

今思い出しても腹が立ってきます。

 

まあ、私の個人的な感情はさて置き、自主回収の〆切日以降にこんな展開になったら超面倒です。

 

MSは自主回収メーカーのMRに連絡して、何とならないかを交渉する。

 

交渉した結果、もし回収OKならまだ良いです。

 

ただし、私の経験上、OKを出してくれるMR(製薬会社)は少ないです。

 

特に、外資系の製薬会社はこの辺りの融通は利かない印象です。

 

元を正せば、自主回収なんて状況を作り出した製薬会社が悪いのは間違いないです。

 

しかし、先ほどの実体験で挙げたようなタチの悪い取引先があるのも事実です。

 

製薬会社と取引先。

 

この両者による板挟みによってMSは苦しんでいるのです。

MRは自主回収の際にMSをナメている?


MS時代の経験上、自主回収になった件について卸のMSに謝罪してくるMRは多くない印象です。

 

もし謝罪されるとしても、それは電話越しであって面前で謝罪されたことは殆どありません。

 

MRにとって最優先すべき顧客は医者や薬剤師ですから、まずそちらへのフォローを行うのは当たり前です。

 

今では私もMRとして働いていますから、その辺りの事情は理解できます。

 

しかし、優先順位が下がるにしてもMSへのフォローを一切しないMRは人間としてどうなの?

 

…と今でも思います。

 

単にMSがどのような形で自主回収に関わっているのかを知らないからなのか?

 

それとも、MSという人種に詫びる必要が無いと考えているだけなのか?

 

MRによって対応が分かれるところでしょうけど、現物回収の手間を担っているMSを軽んじるのは元MSとして釈然としないところです。

 

ちなみに、私自身はMRになって以降に一度だけ自社品の自主回収を経験しました。

 

そのときは帳合の卸に出向いてMS、及び、その上司の方にお詫びしました。

 

自主回収によってMSが本来行うはずではなかったイレギュラーな仕事をさせてしまうのは事実なので、その件についてはMRとして詫びるべきだと思ったからです。

 

案の定、MSとその上司からは文句を言われましたが、それはそれで仕方の無いことだと割り切っています。

 

極端な話、自主回収とは製薬会社と医薬品卸による『会社 対 会社』で合意しての対応ですから、現場単位でMRがMSに詫びるのは必須ではないのかも知れません。

 

必須ではないだけに、普段はMSと距離を置いているMRほど、自主回収の場面でも関りを持たないようにしているのか?

 

MS時代の自分のもとにMRからの謝罪が無かったのは、こういった事情によるものだったのか?

 

いやいや、単にMS時代の私がMRから嫌われていただけなのか?

 

MRとMSの両方を経験しているだけに色々な考え方が出来ます。

 

ただ1つ言えるのは、こういった有事のタイミングでこそ、MRとMSとの関係性、そしてMRの人間性が現れるということです。

 

正解はないのでしょうが、MRにせよMSにせよ、モラルは大切だということですね。

まとめ:自主回収は今後もMSを苦しめ続ける


自主回収って誰も得しない出来事なんですよね。

 

製薬会社(MR)は医薬品卸(MS)に頭を下げる。

 

医薬品卸(MS)は取引先に頭を下げる。

 

取引先は(場合によっては)薬が入ってこないことについて患者に頭を下げる。

 

どれもこれも、製薬会社が変な薬を市場の出さなければこんなことにはなりません。

 

しかし、医療用医薬品の種類は約2万種類もあります。

 

その中の1つや2つで製造工程に問題が生じるなんてこと、業界内ではよくある話です。

 

記事の冒頭で書いた日医工に関しては一気に15品目の不備が認められたわけですが、別に日医工じゃなくても自主回収の依頼が医薬品卸に入ってくるのは特段珍しくはないのです。

 

私自身は、不定期とはいえ何度となく自主回収の仕事を繰り返しました。

 

そして、その度に嫌な気持ちになりました。

 

各製薬会社には製造工程を日頃からチェックしてもらい、自主回収そのものが起きないように努めてほしいものです。

 

…とはいえ、自主回収が完全にゼロになることは今後もあり得ないでしょう。

 

それはつまり、MRだけでなくMSにも皺寄せが行くことを意味しています。

 

MRにとって自主回収は大変ですが、その一方でMSも苦労しています。

 

どうか、この記事を読んでMSの苦労を汲み取ってくれるMRが増えたら嬉しいです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


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