健康被害が続出!小林化工によるイトラコナゾール錠の自主回収について思うこと

MRの今後

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

 

何かと自主回収が相次いだ2020年ですが、12月という年末のタイミングでこれまた凄まじい事件が起こりました。

 

小林化工が製造販売し、Meiji Seikaファルマと販売提携している経口抗真菌剤イトラコナゾール錠 50「MEEK」の自主回収です。

 

しかも、クラスⅠの自主回収です。

 

小林化工 経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」を自主回収・クラスⅠ 睡眠導入剤混入

 

小林化工や明治ファルマのMR、そしてイトラコナゾール関連の薬剤を納めている医薬品卸のMS、そして医療機関、仕舞にはエンドユーザーである患者。

 

4者がそれぞれ混乱している状況かと思います。

 

私もそれなりに長く医薬品業界で働いていますが、クラスⅠの自主回収のニュースを聞くのは久しぶりな気がします。

 

自主回収のクラスⅠ…それはつまり、死亡の原因にもなり得るレベルの危険度を意味しています。

 

この自主回収が告知されて以降、イトラコナゾール錠による健康被害報告は増える一方です。

 

実際、既にイトラコナゾール服用による死亡例も確認されています。

 

小林化工 イトラコナゾール錠50「MEEK」服用で死亡した患者は関東在住70歳代女性

 

末端ながら製薬会社で働く人間として、正直言って複雑な気持ちです。

 

そこで、今日はイトラコナゾール錠の自主回収について個人的に思ったことを記事にしてみました。

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イトラコナゾール錠とはどんな薬なのか?


イトラコナゾール錠は経口の抗真菌薬であり、白癬(はくせん)などの治療に使われる薬剤です。

 

白癬とは、平たく言えば水虫のことです。

 

そんなイトラコナゾール錠に、睡眠薬の成分が混入していたのだから驚きです。

 

一応、簡単にですがイトラコナゾール錠がクラスⅠの自主回収に至った背景などをまとめてみました。

 

・該当薬:イトラコナゾール錠50「MEEK」

・製造ロット:「T0EG08」、100 錠包装 929 箱

・出荷期間:9月28日から12月3日まで

・回収理由:ベンゾジアゼピン系睡眠薬・リルマザホン塩酸塩水和物が1錠当たり5mg混入していたため

 

水虫で足が痒いな~と思って皮膚科を受診した患者さんがイトラコナゾール錠を飲み、原因不明の眠気に襲われるのだから溜まったものじゃありません。

 

自動車を運転したり、危険物を取り扱ったり、そんな最中に眠気を催したらどうするつもりなのか。

 

実際のところ、イトラコナゾール錠と因果関係ありと判断された交通事故事例も挙がっています。

 

小林化工 睡眠導入剤混入製品の服用患者全員への連絡対応を完了 健康被害113件、うち交通事故14件

 

これではクラスⅠ扱いで自主回収されるのも納得です。

 

いや、むしろこれはクラスⅠの自主回収でなければダメな事案です。

 

患者の生死に関わってくる問題なのだから当然ですね。

 

ミクス・RISFAX・日刊薬業などの業界誌でも連日のようにイトラコナゾール錠関連の新しい記事が掲載されており、正直言って理解が追い付きません。(汗)

 

その上、TVや新聞でも報道されており、医薬品業界には関係ない人たちの間でも騒がれています。

 

そのくらい患者・医療機関・社会に与えた影響は大きいということですね。

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医薬品の自主回収レベルは3段階ある


2020年の自主回収と言えば、真っ先に日医工のことを思い浮かべる人が多いと思います。

 

12月に入ってからも自主回収の告知を出していますし、もはや留まることを知らないといった勢いです。

 

日医工 またも自主回収(クラスⅡ) テオフィリン徐放ドライシロップ小児用20%「日医工」など3製品

 

私自身も今年の春に日医工の自主回収についてブログ内で記事を書きましたが、今でもまあまあ読まれています。

 

日医工が自主回収を連発!クレーム対応に追われる日医工MRが気の毒で仕方ない…。

 

つまり、それだけ医薬品業界の人たちにとっては印象深い出来事だったということですね。

 

ただし、これは製造工程における工場側の問題なので、現場のMRに非はありません。

 

とはいえ、医療機関に出向いて謝罪するのはMRです。

 

私自身も自主回収を経験したことがあるMRとして、日医工MRの皆さんのことが不憫でなりません…。

 

さて、そんな日医工の自主回収ですが、その殆どがクラスⅡでした。

 

一方、今回の小林化工・明治ファルマのイトラコナゾールの自主回収はクラスⅠです。

 

クラスⅠとⅡとでは要件が大きく異なります。

 

そこで、この医薬品の自主回収クラスの違いについて、簡単にですがまとめてみました。

 

クラスI:その製品を使用することで、重篤な健康被害・死亡の原因となりうる状況を指す。

クラスII:その製品を使用することで、一時的もしくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある、または重篤な健康被害の可能性はまず考えられない状況を指す。

クラスIII:その製品の使用することで、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況を指す。

参考:厚生労働省ホームページ

 

いかがでしょうか?

 

クラスⅠの自主回収がいかに危険なものなのか、お分かりいただけると思います。

イトラコナゾール錠による健康被害は人災か?


正直言って、小林化工の工場の責任は重いですよね。

 

普通に考えたら水虫の治療薬に睡眠薬が混入しているはずありませんよね。

 

そもそも患者側だって、水虫治療のために皮膚科に行って睡眠薬を出されるなんて思わないじゃないですか。

 

こんなこと、患者のみならず、医者も薬剤師も、そしてMRですら感知できるはずないんです。

 

一体、何がどうなれば抗真菌薬に睡眠薬の成分が混入するのだろうか。

 

つい先ほど、イトラコナゾール錠のクラスⅠの自主回収に至った理由についての記事に目を通しました。

 

小林化工側は2人で確認すべき作業を1人で行っていたヒューマンエラーによるものだと声明を出しています。

 

確かに、何事にもヒューマンエラーは付きものです。

 

私だって仕事中や日常生活の中で些細なミスをしてしまうことはあります。

 

人間とはミスを犯す生き物ですからね。

 

とはいえ、今回の小林化工に関しては酷いなぁと思いました。

 

最悪の事態を想定して、ヒューマンエラーを回避する努力を行わなかったということなのでしょうか。

 

もしそうだとしたら、今回のクラスⅠの自主回収、そして健康被害等々が人災であることは間違いないです。

 

ちなみに、12月7日にはイトラコナゾール錠の全ロット回収をクラスⅡで告知していますが、それは承認書に記載のない工程を実施していることが判明したためだそうです。

 

小林化工 イトラコナゾール錠「MEEK」の全ロット回収(クラスⅡ) 承認書に記載のない工程を実施

 

日医工の自主回収騒動でもよく見聞きしたフレーズですね。

 

一事が万事…という言葉もありますから、今後も杜撰な管理体制が露見してきそうな気がします。

MSの心労たるや計り知れない!


イトラコナゾール錠の自主回収が始まった後、どこの医薬品卸のMSさんもメチャクチャ忙しそうです。

 

私が仕事で関わっているMSさんは、皆さん揃ってストレスMAXって感じです。

 

誰も彼もが、自主回収がー、小林化工がー、…などと言っている気がします。

 

最初はイトラコナゾール錠のクラスⅠに該当するロットのものだけを自主回収していたら、今度はイトラコナゾール錠の全ロットを自主回収(クラスⅡ)する羽目になった。

 

そうこうしている間に、今度は小林化工の全製品が出荷停止になってしまった。

 

Meiji Seikaファルマ 小林化工が製造する販売製品全品目を出荷停止 対象製品は43品目85包装

 

そしてさらに、日医工の子会社であるエルメッド社の後発品まで出荷停止になってしまった。

 

もうこの時点で、代替品の提案や納品に明け暮れたMSさんも多いことと思います。

 

私もMS経験があるので分かるのですが、MSにとって自主回収は超絶面倒くさい業務です。

 

製薬会社の都合による自主回収によって医薬品卸のMSは苦しんでいる!

医薬品の出荷調整・出荷停止の度にMSは苦しんでいる!自主回収後の地獄を語る!

 

場合によっては、代替品の提案や紹介もしないといけない。

 

対応が遅くなると、理不尽なクレームを叩き付けられる。

 

やる気が出ない、憂鬱で仕方ない、それでもやらなきゃならない。

 

それがMSにとっての自主回収です。

 

しかも、小林化工の自主回収はとにかくタイミングが悪いです。

 

年末の12月に自主回収に追われるなんて、MSにとっては最悪な展開です。

 

その上、この流れだと問題がどんどん炎上して、小林化工絡みの品目が芋ずる式に自主回収になっても不思議じゃないです。

 

冗談ではなく、今の小林化工は叩けばいくらでも埃が出そうな気がします。

 

そして、この問題によって皺寄せを受けているのが医薬品卸のMSです。

 

今回の一件、果たしてMSに何の罪があるというのでしょうか。

 

全国のMSが気の毒で仕方ありません…。

病院の薬剤部も混乱している!


私は病院メインで活動しているMRですが、薬剤部も今回のイトラコナゾール問題のせいで目が回るような状況っぽいです。

 

まあ、これだけ健康被害が相次ぎ、関連薬剤が出荷調整・出荷停止にもなれば薬剤部としても大打撃ですよね。

 

いつもは即日アポイントの返事をくれたりする薬剤師さんから返事が来なかったり、Pr.JOYで送ったメッセージを既読スルーされたりすることからも、彼らが多忙であり、混乱の渦中にいることが窺えます。

 

Pr.JOYでのアポイント申請を既読スルーする医者・薬剤師たちについて思うこと

 

先ほどのMSが多忙を極めている理由にも通じることですが、こういった自主回収に伴う出荷調整・出荷停止のときは代替品を手配するので薬剤部にも負担が掛かります。

 

医薬品卸に薬を代替品を発注しても入ってこない。

 

しかし、患者は待ってはくれない。

 

医者からもせっつかれてストレスMAX。

 

何でこんなに忙しいんだ、コラァ!!

 

…などと、憤慨している薬剤師さんは多いことでしょう。

 

こんな状況を強いられる薬剤部もまた、今回のイトラコナゾール問題の被害者なのです。

 

(※この状況でアポイントの返事が貰いにくくなったMRも、ある意味では被害者かも知れない。)

最後に:小林化工の自主回収問題が早期決着することを祈る!


何と言うか、2020年は悪い意味で色々なことがありましたね。

 

新型コロナウイルスの騒動も然り。

 

新型コロナの影響で受診患者が減少!これがMRの売上計画が未達となる要因か?

 

日医工の自主回収も然り。

 

日医工が自主回収を連発!クレーム対応に追われる日医工MRが気の毒で仕方ない…。

 

医薬品卸の談合問題も然り。

 

医薬品卸4社のJCHO談合問題はいつ決着するのか?今後の展開について考えてみる!

 

どれもこれもバッドニュースの類ですが、個人的には今回の小林化工のクラスⅠ自主回収が最も深刻だと感じています。

 

何と言っても、健康被害だけでなく死亡者まで確認されていますからね。

 

本当に、ご冥福をお祈りいたします。

 

さて、自主回収でとにかく騒がれ続けた1年間ですが、そのせいで後発品メーカーへの風当たりがより一層強くなった気がします。

 

現場の小林化工・明治ファルマのMRにしたって、今回のクラスⅠ自主回収によってどれほど謝罪しているのか想像も付きません。

 

こういうとき、何だかんだ言って矢面に立って取引先に詫びるのはMR(営業)の仕事なんですよね。

 

まさか工場の人間が現場の医療機関に来て謝罪するわけにいきませんしね。

 

ぶっちゃけ、ここがMRの辛いところだと思います。

 

さらに、現場のMSさんにとっては不毛な自主回収業務に明け暮れ、本来のMS業務が滞っていることと思います。

 

繰り返しになりますが、自主回収のときはMRとは違った意味でMSも大変ですからね。

 

心身共にストレスは溜まって仕方ないことと思います。

 

自主回収を経験したことのある現役MRかつ元MSとして、このイトラコナゾール錠問題が1日でも早く決着することを祈るばかりです。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。



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