阪神調剤グループがMRとMSによる『定期的な店舗訪問』を廃止する理由を考察する!

MRの今後

こんにちは、アラサーMRのヒサシです。

2021年のGW明けのタイミングで業界誌に興味深い記事が掲載されました。

 

MSとMRの定期的な店舗訪問を順次廃止 I&H、必要な個別店舗訪問は継続

 

I&Hとは、阪神調剤グループの運営だけでなく、介護や福祉といった事業も行っている会社です。

そんなI&Hですが、自社の調剤薬局(=阪神調剤)へのMR&MSによる訪問について、どうやら難色を示しているようです。

業界誌に掲載された内容を要約すると、大体こんな感じです。

・グループの全店舗でMRとMSによる定期的な店舗訪問を順次廃止する

・医薬品の供給など、業務上必要である店舗訪問は継続してOK

・これらの取組みは新型コロナを踏まえたニューノーマル時代の店舗運営を目指すための措置

I&H、いや、阪神調剤は一体どういうつもりで、こういった声明を発表したのでしょうか?

早い話、阪神調剤としては大した用事が無いなら来ないでくれ!とMRやMSに言いたいのは間違いなさそうです。

では、その理由とは何なのか?

阪神調剤の内部から、MRとMSによる訪問について辟易している声でも挙がったのでしょうか。

あるいは、コロナ感染のリスクを最小化するための措置なのか。

その辺りの事情について考察していこうと思います。

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阪神調剤にとってMRとMSは招かれざる客か!?

報道されている内容を見る限り、阪神調剤としてはMRとMSによる頻繁な訪問について好意的ではない印象を受けます。

ところで、MRとMSによる『定期訪問』とは何でしょうか?

何と言うか、定義が曖昧ですよね。

MRやMSが処方元の情報を伝えることを指しているのか?

あるいは、彼らが詰めの依頼をするために押し掛けてくることを指しているのか?

はたまた、特に用事もなく雑談しに来ることを指しているのか?

何れにせよ、阪神調剤としては『医薬品の供給に関する用件であれば訪問を認める』という姿勢みたいなので、それ以外の用件では来ないで欲しいってことなんですかね。

では、上記の予想を踏まえて、阪神調剤の意図について考察していきます。

予想①:コロナ感染のリスクを抑えたい

このコロナ禍のご時世、他人との接触を減らすに越したことはありません。

極端な話、『他人との接触頻度を減らす』=『感染リスクを減らす』ということに繋がりますからね。

調剤薬局で働く人々(=医療従事者)にとっては尚更、大切なテーマだと思います。

この前提で考えると、不要不急の訪問を行っているMRやMSとの接触を減らすことは理に適っています。

MRにせよ、MSにせよ、色々な医療機関への訪問活動を行っているのは事実です。

そんなMRとMSですから、どこで新型コロナに感染して、無症状のままウイルスを広げているか分かったものじゃない。

言葉は悪いですが、阪神調剤としては『MRとMS』=『ウイルスの媒介人』と考えているのかも知れませんね。

実際のところ、大きな病院ではMRやMSに対して、不要不急の訪問は控えてほしいという理由で訪問規制を行っています。

阪神調剤としては、感染リスク低減のために訪問規制に踏み切った…ということなのでしょうか。

予想②:MRとMSによる訪問がウザいと思っている

実はコロナ禍というのは単なるきっかけであり、

本音はこちらでは?

…と、個人的には思っています。

MRあるいはMSに訪問してほしくない。

その理由は、ただ単純にウザいから。

だから、この機会にMRとMSの訪問規制に踏み切った。

私個人としては、そんな気もしています。

私の経験上、MRだろうがMSだろうが、営業に来られること自体を煙たがっている薬局は間違いなく存在します。

これは私自身の反省点でもあるのですが、これまで雑談や詰めのためだけに調剤薬局を何度訪問したか分かりません。(汗)

そもそも、MRやMSが訪問してきた時点で、薬局スタッフの仕事が中断されてしまうことも少なくないです。

仕事中なのに、MRやMSの求めに応じて手を止め、彼らの営業活動に付き合う。

こういった行為自体に辟易している人(特に薬剤師)って、案外多いと思います。

…で、何の用事かと思えば、中身のない世間話だったり、詰めの依頼だったり。

 

1月は毎年『パタノール点眼液』の詰め込み販売で苦しんだ体験談

MS時代に大正製薬の超難関施策『鷲友会(しゅうゆうかい)』で苦しんだ体験談

 

ハッキリ言って、詰めなんて調剤薬局にとっては1円の得にもなりませんからね。

完全に製薬会社(MR)と医薬品卸(MS)の都合による頼みです。

こういった用件での訪問を好まない薬剤師は一定数います。

(※阪神調剤のような広域のチェーン薬局では、そもそも詰め自体が不可能なことも多いけど。)

ところで、私が新人MSだった頃、調剤薬局を含む取引先を訪問したら、雑談をしろ、世間話をしろ、などと上司・先輩から指導されました。

そして、そんな指導を疑うこともなく実践してきたワケですが…

私は常に、心のどこかで『こんな中身のない会話によって、相手の時間を奪って良いのだろうか?』という負い目を感じていました。

まあ、こんな私個人の思い込みはともかく…

阪神調剤の立場で考えたときに、有意義な情報提供をしてくれるMR・MSが少ない、または全くいないと考えたのではないでしょうか。

予想③:本部からの情報伝達が速いし正確である

阪神調剤という組織において、本部からの情報伝達と、MRやMSからの情報伝達とでは、果たしてどちらがより早いか?

この辺りはMR・MSの技量によっても違ってきますが、多くの場合、本部から降りてくる情報の方が速いのではないでしょうか?

だったら、現場の店舗に来るMRやMSの訪問を規制しても問題ない。

もしかすると、阪神調剤としてはそんな風に考えているのではないでしょうか?

例えばですが、新薬の発売だとか、自主回収の背景だとか、阪神調剤くらい大きな組織であれば、1日で各店舗への通達が済んでしまうワケです。

わざわざMRやMSが各店舗に出向いて、口頭での説明を受けるまでもない。

仮にMRやMSが何らかの案内をしに行ったとしても、

その件については、本部から既に連絡が来ているので知っています。

…という状態になっていることも珍しくないです。

この辺りは阪神調剤で働くスタッフ(特に薬剤師)が、MRやMSから生の情報を聞きたいと思うかどうかですが…

先ほど述べた通り、MRやMSとの面会自体を好まない薬剤師は一定数います。

本部から情報が降りてくるのであれば、MRやMSと会って情報を仕入れる必要はない。

もしかすると阪神調剤の内部では、そんな意見が挙がっていたのかも知れませんね。

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MRやMSにとって訪問規制は悪いことばかりではない!

今さらながらですが、調剤薬局への営業活動って必ずしも面前で行う必要って無いですよね。

処方元の状況であれば電話で伝えても良いし、自主回収に伴う代替品の状況についてメールで伝えても良い。

あるいは、Zoomなどのオンライン技術を使って説明会を開催するのもアリです。

私のMS時代の先輩には、LINEを使って取引先の薬局長に詰めの交渉をしている人までいましたからね。

(※会社によっては、営業活動でLINEを使うのはコンプライアンス的にはグレーですけど。)

こういったリモート営業を頑張りさえすれば、直接訪問しなくても仕事を回すこと自体は可能です。

実際、若いMRやMSほど、こういったリモート営業を上手く行っている印象があります。

何だかんだ言って、リモート営業であれば直接店舗まで赴く必要が無いだけに、時間と労力を節約できますからね。

阪神調剤の声明を受けて、こういったコスト面の効率化について喜んでいるMRやMSは意外といるのではないでしょうか?

訪問できる先が減ってしまうという意味では、確かにMRやMSとっては痛手です。

しかし、その一方でMRやMSにおけるメリットも間違いなくあるワケです。

まとめ:他の広域調剤も阪神調剤に追随するか!?

この阪神調剤の取組みについて、他の広域調剤は果たしてどう思っているんですかね…。

繰り返しになりますが、MRやMSによる訪問(=営業活動)をウザいと思っている調剤薬局は一定数います。

いくらMRやMSが精度の高い営業活動をしているとしても、その活動が相手にとって有益かどうかは分からない。

少なくとも、詰めに関しては調剤薬局側には何らメリットが無いですからね。

このブログ内で何度も述べてきましたが、詰めは医薬品業界の悪習だと私は思っています。

 

医薬品卸のMSを苦しめる『詰め込み販売』とは?元MSが業界内の悪習を暴露します!

MRに無断で『詰め込み販売』を行うMSの罪深さについて語る!

 

こんな悪習は1日でも早く廃れるべきだと心の底から思っています。

…という前提で考えると、MRやMSが詰めを依頼してこないという一点だけで、大喜びする調剤薬局は間違いなくいると思っています。

意外と阪神調剤のやり方に追随するような広域調剤も出てくる気がしますが、この先どうなっていくのでしょうね。

他の広域調剤がMRまたはMSの訪問規制を行っているという話を聞きましたら、またこういった記事を書いてみようと思います。

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!



コメント投稿はこちら

  1. 焼肉と言ったらホルモン より:

    なるほど!阪神がそのように動きましたか!時代だなぁというのとコロナの影響もあるだろうね、という感想ですね。またヒサトさんの考察もさすが元MS!私とほぼ同じ思いのようで(^^) これからは私が思うに広域調剤は本部からの通達ですので、という風に現場はMS.MRに言いやすいというのもあり追随していくのではないかなぁと思います。実際に阪神の真似をする多店舗薬局は一定数出てくるのは必然だと思います。一方個人店さんは情報網もそれほどでもないのでそこまではいかないとは思います。とても興味深い記事をありがとうございました^_^

    • ヒサシ ヒサシ より:

      ホルモンさん

      コメントありがとうございます!
      阪神調剤の決定について、個人的には『そりゃそうだよなぁ…』と思っています。

      薬局勤務の人たち(特に薬剤師)からしたら、ハッキリ言ってMRやMSによる頻回訪問って負担でしょうなからね。(汗)
      チェーン薬局と個人薬局とではMR・MSの訪問に対して受け止め方が異なりそうですが、少なくともチェーン薬局としてはMR・MSが来なくてもそれほど困らないのかなと思っています。本社機能も充実しているでしょうし。

      ましてやコロナ禍のご時世ですから、今回の決断について喜んでいる薬剤師さんは多いと予想しています。
      一方で、調剤薬局への営業が必要なMR(特にプライマリー領域担当)やMSにとっては厳しい時代になっていきそうですね。

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